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2017.09.28

三種浜田風力発電所建設工事

空中で巨大風車の羽根を起こす
三種浜田風力発電所建設工事
秋田・三種町に建設中の風力発電機。大林組は再生可能エネルギー分野で初の風力発電事業を開始する

秋田・三種町に建設中の風力発電機。大林組初の風力発電事業がスタートする

大小さまざまな風車が連なる秋田県の日本海沿岸。県北部に位置する三種(みたね)町で大林組は風力発電所の建設を行っている。大林組の再生可能エネルギー事業として初の風力発電となる。

風況豊かな秋田県西部では風力発電所が数多く建設されている

風況豊かな秋田県西部では風力発電所が数多く建設されている

風力が電気に変換される仕組み

風力が電気に変換される仕組み  ※クリックで詳細表示

発電容量2MWを超える巨大風車の建設には、国内に数台しかない1,200t級の超大型クレーンが必要だが、ここではそれを使用せず、新開発の組み立て装置を用いている。

この工事では風力発電機を3基設置する。その発電量は、三種町の総世帯数の7割に当たる約5000世帯の年間消費電力にほぼ等しい。

高さは30階建ての高層ビルに相当

地面から風車の羽根の頂点までの高さは、最も高い位置で125m、およそ30階建てのビルに相当する。構成するパーツの一つひとつがとにかく大きく、柱となる塔体は高さが78m、3枚あるブレードの長さは1枚46mに及ぶ。ほかにも、ブレードの中心に据え付けられるハブは直径4m、ハブの後方にあって発電機などを内部に備えるナセルは70tもある。

海岸沿いに並ぶ1、2号機と風車部分の接合作業が進む3号機(手前)

海岸沿いに並ぶ1、2号機と風車部分の接合作業が進む3号機(手前)

巨大な部材を運ぶ

海外で製造されたパーツは2ヵ月半の航海を経て能代港に到着

海外で製造されたパーツは2ヵ月半の航海を経て能代港に到着

高所作業車を用いて2kmにわたり木々を伐採

高所作業車を用いて2kmにわたり木々を伐採

風車のパーツは海外から大型船で能代港に到着。新幹線2両分の長さに相当するブレードをはじめ、すべて港から現場まで、国道や県道を経由する10kmの道のりを大型トレーラーで陸上輸送される。

大型トレーラーが曲がりきれない交差点では、建物の囲いの一部を一時撤去してもらったり、道路内に伸びた枝を地権者の許可を得て伐採したりするなど、細かい支障対策を施した。

事前の輸送計画と準備が奏功し、誘導車に挟まれた大型トレーラーは無事に3ヵ所の交差点を通過。およそ1ヵ月間かけて、24のパーツを計画通りに運び込んだ。

超大型クレーンを使わずに風車を組み立てる
部材運搬用の昇降ステージで上りながら、水平から垂直に建て起こされていくブレードとハブ

部材運搬用の昇降ステージで上りながら、水平から垂直に建て起こされていくブレードとハブ

ナセルを塔体の上に接合。昇降ステージに固定されているため風に強い

ナセルを塔体の上に接合。昇降ステージに固定されているため風に強い

最小限のスペースで施工できるため木々の伐採も抑えられる

最小限のスペースで施工できるため木々の伐採も抑えられる

東京機械工場で行われた建て起こし装置の実証試験

東京機械工場で行われた建て起こし装置の実証試験

通常、巨大風車の建設では、高さ80mを超える場所に70~100tの重量物を楊重するために1200t級の超大型クレーンを使用する。

しかし、超大型クレーンは台数が少なく確保が困難なうえ、広範囲なクレーンの組み立て場所も必要となる。そこで大林組は、超大型クレーンを不要とするウインドリフト工法を開発した。

ウインドリフト工法は、塔体に沿ってエレベーターのように上下する昇降ステージを利用した組み立て技術。羽根部分を昇降ステージ上で接合し、上昇させながら建て起こしていくという今までにないやり方だ。

まず、塔体を最下部から順々に積み上げ、最頂部(地上80m)に発電装置となるナセルを設置。その後、10mの高さにある昇降ステージ上で、風車の羽根となる3枚のブレードとハブを水平のまま接合する。一体化したブレードとハブは、上昇しながら徐々に垂直に建て起こされ、ナセルに装着される。

ブレードとハブの一体化を空中でできるため、地面にそのためのヤードを整備する必要がない。周囲が林地の場合、木々を伐採するなどの準備工事も不要となる。

風に強いのもウインドリフト工法の利点。超大型クレーンで行う場合、長いワイヤーでパーツをつるため、荷振れが大きくなってしまう。特に上空では風の影響を受けやすく、作業を中断することが工程を遅らせる要因にもなっている。ウインドリフト工法では、昇降ステージにパーツを固定して上昇させるため、荷振れを最小限に抑えることができる。

今回の開発に当たったのが大林組の機械部と東京機械工場。実用性が低かった既存の類似技術に、羽根部分を建て起こすという新しい機能(特許出願中)を付けて高機能化を図った。

ウインドリフト工法の実用化に向けて、東京機械工場では実証試験を実施。水平に組み立てた羽根部分を建て起こす際に支柱に干渉しないか、80tの荷重に耐えられるかなど、今回新たに開発した建て起こし装置の機能を確認した。入念な事前準備により、新装置は一切のトラブルもなく稼働しており、工事は順調に進められている。

装置組み立てから風車の建設、装置解体までを動画でご覧いただけます

(動画再生時間:22秒)

地元の期待に応える
三種浜田風力発電所建設工事

三種町の三浦正隆町長は起工式で「風力発電で国内有数のモデル地域をめざしたい」と述べた。所長の鈴木は「今回の建設工事で蓄えられた実績や経験が、今後の大林組の風力発電所建設の糧になる」と、風車の建設に対する思いを話した。

事業開始予定は2017年11月。風車が回り出したとき、大林組の再生可能エネルギー事業が大きな一歩を踏み出す。

(取材2017年5月)

 

●工事概要

名称:三種浜田風力発電所建設工事

場所:秋田県山本郡三種町

発注:大林ウインドパワー三種

設計:大林組

概要:風力発電機3基

風車:定格出力1,990kW×3基=5,970kW、羽根の直径92.5m、羽根の中心高さ78m、最高部の高さ約125m

基礎:RC構造物、場所打ち杭径1,500mm(8本/基)

仮設:道路造成980m、発電所仮設ヤード2,500m²/基

工期:2016年6月~2017年10月

施工:大林組