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2018.03.13

東京駅北通路改良他1~4工事

東京駅に新たな流れをつくる
東京駅北通路改良他1~4工事
東京駅に新たな流れをつくる 東京駅北通路改良他1~4工事

幅員が広がる北通路。ホームまでのエスカレーターも設置されるなど利便性も高まる

およそ100年前、大林組の創業者が威信をかけて建設した東京中央停車場。大林組はそれ以降、鉄道網の発展に伴って規模を拡大し続ける東京駅の工事に携わってきた。現在、丸の内側と八重洲側を結ぶ3つの改札内通路のうち、神田寄りにある北通路の利便性を向上させる改良工事を手がけている。平常運転の維持、駅利用者の安全確保、商業施設の閉鎖を最小限にする、といった駅工事特有の施工条件を一つひとつクリアしながら作業を進めている。

東京駅北通路改良工事の位置図

着工前はレンガアーチと盛り土による構造(上)、竣工後は広々とした空間に生まれ変わる(下)

レンガアーチと盛り土により、開業当時から線路・ホームが高架化され、1階に通路や改札口が設けられていた東京駅。レンガアーチに挟まれ、幅員がわずか6.7mだった旧北通路は、年々増加する利用客で慢性的な混雑が発生し、耐震性の問題も指摘されていた。

これを解消するために始まったのが、線路やホームをRC(鉄筋コンクリート)造の高架橋に改良し、通路の幅員を12mに拡張する今回のプロジェクト。併せて、地下に商業施設や待合広場を新設することで、より一層魅力ある東京駅へと変わる。

線路とホームを支えてきたレンガアーチをワイヤーソーを用いて解体

線路とホームを支えてきたレンガアーチをワイヤーソーを用いて解体

工事の流れ

工事の大まかな手順はこうだ。まず、レンガアーチの上にある在来線の7本の線路と4つのホームを、橋脚で支持する仮設の桁(線路部分:工事桁、ホーム部分:ホーム桁)に架け替え、既設構造物を解体・撤去する。その後、柱・梁などの躯体を構築し、工事桁の外周に埋設型枠を設置してコンクリートを打設。高架橋を完成させる。

本工事では、従来仮設とされる工事桁を本設構造物として利用する。こうすることで、供用後の列車振動に伴う軌道の騒音などを防止でき、軌道整備などのメンテナンスを簡素化できるなどの多くの利点があるからだ。

 
作業量を正確に把握。作業は終電から始発まで
終電後のホームと線路では工事桁の架設作業が進む

終電後のホームと線路では工事桁の架設作業が進む

工事は時間との勝負だ。東京駅は遊休線がなく、線路やホーム上で作業できるのは、終電から始発電車が走りだすまでの数時間のみ。また、搬入路が限られるため、資機材は小さく分割して運搬しなければならなかった。さらに工事の痕跡を残さずに、線路やホームを毎回復旧することも求められる。日々の作業工程は、始発電車の時間から逆算して策定。運び込める資機材の量を考慮し、分刻みの工程を綿密に組んでいった。

線路を走ることができる台車で工事桁を運搬

線路を走ることができる台車で工事桁の部材を運搬

コンクリートを打設した工事桁

コンクリートを打設した工事桁

予定された作業を確実にこなすことが求められる中、時間の算出が難しい作業がコンクリートの打設。RC躯体の構築では、細かい隙間に打設する必要がある工事桁の本設化作業が課題となった。遠方のプラントからの運搬と、長距離の圧送によってコンクリートの流動性が損なわれ、ミキサー車の頻繁な入れ替えが必要となり、作業効率が悪化するからだ。

その問題の解決に寄与したのが、大林組が開発した高流度コンクリート「フレッシュキープ工法」。特長は流動性を長時間保てることで、1台のミキサー車に搭載できる量が増加する。技術研究所で行った試験施工を通じて、細かい作業サイクルを確認。入れ替え作業による時間のロスや予備車を手配する必要がなくなり、予定数量の確実な打設とコストの削減に大きく貢献した。

駅利用者への心遣い

既設構造物の解体・撤去工事における難題の一つは、数えきれないほどのインフラ配管やケーブルが張り巡らされていること。「撤去するか否かは発注者も交えて協議を重ねますが、1本のケーブルをどうするか決めるのに数ヵ月かかることもあります。判断を誤ると停電など駅の運営に大きな支障をきたすので、慎重に作業を進めています」と、主に内装や設備を担当する建築部門の所長 岸は話す。

通行者が行き交う自由通路を横断。「カート通ります」と大きな声で注意を呼びかける

通行者が行き交う自由通路を横断。「カート通ります」と大きな声で注意を呼びかける

また、解体材は台車に載せ、改札外の北自由通路を横断してヤードまで搬出する。通行者との接触を防止するため、横断路には二人の誘導員を配置。通行者が途切れた一瞬を狙って通り抜ける。日々、何十回と行う作業だが毎回張り詰めた空気が漂う。「仮囲いのすぐ外には駅利用者がいます。振動や騒音、臭気の発生にも気を付けて、不快な思いをさせない作業を心がけています」と土木部門の所長 赤尾の言葉には緊張感がにじむ。

安全は日頃の積み重ね
北通路から7、8番線(上野東京ライン)ホームにかけて新設された3基のエスカレーター

北通路から7、8番線(上野東京ライン)ホームにかけて新設された3基のエスカレーター

乗降人員は1日約88万人、乗り換えを含めるとさらに多くの人々が利用する東京駅。発注者の協力も仰ぎながら、安全管理には万全を期している。利用者にとって安全な場所である駅でけがをすることのないよう、養生テープの剥がれやマットの凹凸などに目を光らせている。さらに危険の芽を摘むため、監視員が工事エリアの外周を常時巡回。仮設物の状況もくまなくチェックしている。

作業員への安全教育では、過去の事例を用いながら安全の重要性やリスク回避方法などを繰り返し確認している。「経験がものをいうのが駅工事です。熟練の作業員が多く、社員も含めてスペシャリストが結集しています」と両所長は胸を張る。

「『東京駅』の工事に関わっている、その誇りが皆を突き動かす原動力になっています。強い責任感を持って愚直に安全と向き合い、東京駅に新たな歴史を刻みます」。所長の赤尾は強いまなざしで工事への思いを語った。

東京駅北通路改良他1~4工事

(取材2017年10月)

 

(写真協力:東日本旅客鉄道株式会社)
 

●工事概要

名称:東京駅北通路改良他1~4工事

場所:東京都千代田区

発注:東日本旅客鉃道

設計:東日本旅客鉃道

概要:
(土木)工事桁架設延長422m、掘削3万8,200m³、 既設構造物撤去1万2,218m³、RC躯体9,586m³、鉄骨1,026t ほか
(建築)SRC造・RC造・S造、B1、1F、ホーム階、延1万7,600m²

工期:2010年11月~2021年2月(予定)

施工:大林組