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特集 知恵と土を重ねる盛土

 

雨の多い季節になりました。雨は大地を潤す天からの恵みである一方で、水害や土砂災害などをもたらすことがあります。自然の恩恵を享受するとともに、災いを防いで人々の生活を守るため、古来から堤防やダムなどの土木構造物によって治水が行われてきました。

 

治水の最も一般的な方法として、「土」を盛り上げて、土地の一部を高くする「盛土(もりど)」があります。今回は、私たちの暮らしを支えている盛土についてご紹介します。

 

 

 

1. 古来から活きる盛土

大阪府にある狭山池ダムは、7世紀前半に造られた日本最古のダム式のため池で、『古事記』 や『日本書紀』にもその名が記されています。狭山池ダムは、農業用水の供給源として盛土により築かれ、現在も洪水調整や利水としての役割を果たしています。

 

先人たちの知恵が活きる盛土は、現在でも一般的な工法です。私たちは、土の性質を把握することで、より安全な盛土を造っています。


保存展示されている狭山池ダムの堤体断面(高さ約15m、幅約60m、奥行き1m)
大阪府立狭山池博物館に保存展示されている堤体断面(高さ約15m、幅約60m、奥行き1m)。改修の際に歴史的に貴重な堤体を一部切り出し、液体樹脂で固めて保存しています


大改修された現在の狭山池ダム
1988年から14年にわたって大改修された現在の狭山池ダム。7世紀前半の築造当時は、堤体(ダム本体)をより強固にするために、土にはない引っ張り強さを期待し、大きな葉を補強材として内部に敷き詰めていました

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2.土から盛土へ

盛土の材料である土は安価で手に入りやすく、化学的にも非常に安定した材料です。しかし、自然材料であるため、コンクリートや鋼材のように製造過程で品質管理された人工的な材料とは異なり、材料としての「土の性質」は地域や場所によりさまざまです。

 

また、盛土の「造り方(水分量や盛土の締め固め具合など)」によっても土の状態が変化します。そのため、盛土の材料として土を有効に利用するには、「土の性質」と「造り方」をよく理解することが大切です。

 

盛土は非常に歴史がありますが、主に経験的な知識を基に造られてきました。「土の性質」と「造り方」が十分に理解できるようになったのは、20世紀初めに土の力学的な研究が進み、土を材料として扱う工学分野が発展してからでした。現在では、「土の性質」をよく理解したうえで適切な「造り方」を決め、高度に品質管理された盛土の構築が可能になってきました。

 

 

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3. 材料としての土の性質

図1 土の構成
図1 土の構成

土は「土粒子」が骨格となり、それを取り囲む隙間は、主に「水」と「空気」で構成されています。

骨格となる土粒子には、その大きさによって粘土や砂、レキなどの呼び名が付けられています(図2)。盛土には細かい土粒子(細粒分)と粗い土粒子(粗粒分)を混ぜて使います。

図2 土粒子の大きさと名称
図2 土粒子の大きさと名前

 

 

土粒子はさまざまな大きさや形状があります。 土粒子の大きさは、土に含まれる水の動き方(透水性)にも大きく影響します。砂を基本にすると、レキの透水性は100倍、一方粘土は10万分の1程度です。透水性が低い粘土(※1)はダムなどの水を止める部分に使われます。

 

 

土粒子の大きさ
(1)は粘土の電子顕微鏡写真です。0.1μm(10万分の1cm)の大きさの中で、透けて見えるような板状粒子は粘土鉱物の一種であるカオリナイトで、真っ黒い微粒子の集合体は酸化鉱物の一種であるヘマタイトです(※2)。鉱物が異なることでいろいろな形状や大きさになっています。(2)は砂の一例で1mm程度の土粒子で構成されています。(3)は岩砕(がんさい)と呼ばれる大きなレキで、最大30cm程度のものが含まれた材料です。空港の埋め立てや大規模な造成などで実際に利用されています

写真1 土粒子の大きさ

 

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4. 盛土の造り方

 

水の管理と土の固め方

盛土には細かい土粒子が適度に混ざった砂やレキを使用します。土は締め固めると空隙(くうげき)が小さくなり、密度が上昇し、強くなります。また水分量も強さを左右します。

 

図3 土の中の水分と土の強さ
図3 土の中の水分と土の強さ

 

土ごとに強さが最大となる含水比(土の中の水分量の割合)があり、小さいと乾燥状態、大きいと液状となり強さが低下します。また、強さが最大となる含水比のとき、土の密度もほぼ最大になります。このため、締め固めた状態で盛土の強さを最大にするには、土の密度が最大になる状態を目標として施工管理することが大切です。

 

実際の盛土の施工では、盛土全体の密度を均一にするため、一般的に土を締め固めた後の層厚が約30cmになるよう、盛っては締め固める過程を繰り返します。

 

 

1. まずブルドーザーなどの敷きならし機械を用いて、ある一定の層厚で土を敷きならし、2. ローラーなどの締め固め機械で転圧します

図4 盛土の造り方

 
 

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盛土の安定

図5 建設材料の強さの比較
図5 建設材料の強さの比較

盛土の土は、図5に示すようにコンクリートや鋼材などの材料とは異なり、強さが変化するのが特徴です。土の強さは、上載荷重(対象部分より上に載っているものの重さ)に比例して増大します。

崩れない安定した盛土を造るためには、使用する土の強さとともに、強さが変化するという性質を考慮して設計することが必要です。

さらに完成後も、盛土中の含水比が変化すると土の強さが変わり、盛土の強さや安定性にも影響するので、あらかじめ対策しておきます(図6)。

図6 不安定化の例:雨による地下水位の上昇
粘性土地盤(粘土が主体の地盤)上の盛土では、雨の多い季節に盛土内の地下水位が上昇します。それによって盛土の端部が、粘性土地盤も含む大きな範囲や盛土内の範囲で、円弧状に滑って崩れる「円弧滑り」が発生する可能性があります。円弧滑りを防ぐため、排水層や排水孔などを設置して、盛土内の地下水位の上昇を抑制します

図6 不安定化の例:雨による地下水位の上昇

 

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5. 大林組の取り組み

大林組は安全性の高い対策方法や施工管理を提案、実施するため、長年培ってきた知恵や経験を活かすとともに、土や盛土の調査・研究・技術開発を行っています。

 

土を知る

土の強さと性質を知ることは、盛土の設計の基本です。大林組では、国内最大規模の超大型三軸試験装置を用いて、盛土に使用される粒径の大きな土の試験を実施しています。
この結果から盛土の強さや沈下、液状化の程度を分析します。

盛土を実験する

盛土の安全性を検討するため、盛土と地盤の模型に実際の土を使って実験することもあります。最近では、盛土・地盤模型に遠心力を加えることで、実際と同様の上載荷重を再現する手法がよく採用されます。
大林組は国内最大規模の遠心模型実験装置を用いて、より大規模かつ精密に盛土や地盤の挙動を調べています。

施工途中の状況をシミュレーションする


数値解析プログラムGRASP3D(※6)による
盛土や地盤のシミュレーション

安全に施工するため、施工途中の盛土や地盤の変形を3次元FEM(※4)による数値解析手法(シミュレーション)で評価します。
アニメーションは、ダム堤体の施工に伴う間隙(かんげき)水圧(※5)の変化などを解析した結果で、間隙水圧の発生と消散、および堤体の変形を表しています。
赤い部分は間隙水圧が大きく、青い部分は小さいことを示します。また、堤体の施工途中だけでなく、完成後、ダムに水がたまるときの変化も示しています。

正確に施工する

αシステムなどIT活用した施工管理技術
αシステムなどIT活用した施工管理技術

施工過程の盛土の密度など、仕上げ具合を管理する技術として「α(アルファ)システム」を開発しました。
従来は限られた地点の土のサンプルを採取して、品質を確認していました。αシステムは、締め固め機械の一つである転圧ローラーに、センサーを取り付けて、転圧時の締め固め具合を連続して自動的に判定し、盛土の品質を数値化して管理します。

補強する

既に存在する盛土や地盤を地震などから守るため、耐震補強が必要になることがあります。「ハイスペックネイリング」は盛土や切土(きりど)の耐震補強などに使用する高耐力の対策工法です。
地盤を削孔した後、先端に特殊な袋体(パッカー)を装着した芯材(鉄筋など)を挿入し、その袋体にグラウト材を加圧注入することで、引き抜き抵抗力の増強を図っています。

大規模な盛土(ダム)の事例紹介

森吉山ダム

秋田県にある森吉山ダムは、土や砂利、岩を積み上げて造られたロックフィルダムです。治水(洪水対策)や利水(発電、上水、かんがい、渇水期の流量安定)を目的に、2002年から2012年まで約10年の歳月を経て完成しました。
(堤高:89.9m、堤頂長:786.0m、堤体積:584万9,000m3

 

完成時の森吉山ダムと盛土施工の様子

 

ダム本体(堤体)の中央部は透水性の低い土で遮水し、両側は岩(ロック材)を盛ることで堤体の安定を図っています。堤体は1層約30cmごとに敷きならしと転圧を繰り返して造りました。

 

大林組は、今後も土や盛土をはじめ、材料や工法の研究・開発に取り組み、安全で安心して暮らせる街づくりに貢献していきます。

 

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