土留工法

地下鉄大江戸線環状部の土留工法
大江戸線環状部において、開削工法で施工した駅部、立坑、中間ポンプ所の掘削に際して、種々の土留工法が単独で、あるいは組み合わせて使用された。ここでその主な土留工法について解説する。

BH杭(Boring hole pile):
ボーリング機械を用い、回転ビットとビット先端部からの泥水の噴射力を利用して所定の深さまで削孔する。削孔後、孔壁の崩壊を防ぐため、安定液(ベントナイト泥水)を常時補給して充填する。孔内に芯材(掘削時土圧に対抗するための材料で、形鋼材、鉄筋かごを使用)を建て込み、モルタルまたはコンクリートを打設して安定液と置き換える。ボーリング機械は小型のため、埋設物があって路上から杭打ちができない褄部や既設地下鉄下での杭打ちに使用される。

親杭横矢板土留:
地中に親杭として鋼杭を打ち込み、掘削の進行に合わせて木製の横矢板を親杭と親杭の間にはめ込み土留壁としたもので、地下鉄の建設当初では、最も標準的な土留であった。この土留壁は比較的工事費が安いが、開水性であり、剛性が低いため、出入口などの比較的掘削深さの浅い、小規模な工事以外はあまり使わない。

SMW(Soil Mixing Wall):
多軸式アースオーガー機により、地山の土にセメント系懸濁液を原位置で混合して造成した地中壁である。孔内に芯材として形鋼材を建て込む。

RC地中連続壁:
掘削土を安定液(ベントナイトおよび高分子ポリマーなど)に置き換え掘削断面を保護しながら、水平多軸回転式掘削機などで地山を掘削し、地下に壁状の溝を造成する。掘削後、溝の中に鉄筋かごを建て込み、水中コンクリートを打設して安定液と置き換え、連続壁体を構築する。地中連続壁は、仮設土留壁ばかりでなく本体構築側壁の一部として利用することもある。

安定液固化連壁:
RC地中連続壁と同じ方法で溝を掘削し、溝内に芯材として形鋼材や鋼矢板などを建て込み、安定液にセメントなどの固化材を添加して固化した壁を構築する。

NOMST(Novel Material Shield-cuttable Tunnel-wall System):
シールドマシンのカッターで立坑の壁を直接切削・開口することを可能にする土留壁。NOMSTに用いられる新素材コンクリートは、カッターで切削可能な石灰石粗骨材を使用した高強度コンクリートと鉄筋に近いヤング係数を持つ炭素繊維強化プラスチック(高強度補強材)からなっている。