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#06 JUN KAWANISHI Film Director

INTERVIEW #06 JUN KAWANISHI
Film Director

Q:「おおばや氏とぼく」を演出される上での狙いやポイントについて伺えますか?

A:「おおばや氏」が登場するこのCMは、いわゆる擬人化と呼ばれる表現です。ただ、企画をいただいて初めに考えたのは、これは普通の擬人化じゃないな、ということでした。商品や企業をそのままキャラクターにするのでなく、大林組が持っている「つくるを拓く」という概念をキャラクターにしていく。それをどういうバランス、どういうトーンで成立させるのか、そこが面白いと同時に難しい点だと思いました。

Q:その難題にどのようなアプローチで臨まれたのでしょうか?

A:実はこのCM、お話の枠組みから見ると、主人公は「おおばや氏」でなく「ぼく」の方なんです。「ぼく」は視聴者に近い、いわゆる普通の人を体現している存在。そんな彼が、あるとき不思議な人物に出会うところから物語が始まる。その人物には、謎めいたところもあるし、共感できるところもある。知れば知るほど奥が深くて、これからどうなっていくんだろうという気持ちを自然と抱く。それが物語の推進力になって、概念的なものが伝わるといいなと考えました。「グレート・ギャツビー」や「ロング・グッドバイ」など、文学の世界では昔からある王道のフォーマットですが、意外とCMではなかったかもしれませんね。

Q:「おおばや氏」というキャラクターの演出にあたって意図したこと、また佐藤健さんにお伝えしたことなどはありますか?

A:佐藤さんってやっぱりかっこいいんですよね(笑)。それもちょっと人を寄せつけないかっこよさ、なんでもできすぎちゃうタイプのかっこよさがある。ただそれだと、「ぼく」が「おおばや氏」と距離を詰めていくことができない。今回の佐藤さんは、かっこいいというより、ユーモラスで可愛らしいキャラクターにできないかと考えました。それは、佐藤さんが出演している他のCMとの差別化にもなるなと。あと佐藤さんは、自分ですごい考えて演じてくださるので、ネタを提供していくとどんどん吸収して実践してくれる。なので手取り足取りというよりは、半分をこちらがつくって、もう半分を佐藤さんがつくる、そうやってキャラクターができていったと思います。

Q:矢本悠馬さん演じる「ぼく」についてはいかがでしょうか?

A:矢本さんは過去にもご一緒したことがあるんですが、彼は面白くし始めるとどんどん面白くできるんです(笑)。ただ今回は、設定上普通の人を体現しているというのと、実は主人公というところで、あえて矢本さんの面白さを抑えていくことを意識しました。実はそこがうまくいくかちょっと心配していたんですが、矢本さんもすごい考えてくださっていて、僕から特に言わなくても自動的にそうなっていきましたね。さすがだなと思いました。

Q:お二人のかけあいはテンポが良く楽しいものになっていました。会話の演出にあたって意図したことなどはありますか?

A:会話劇ってコメディにしすぎないほうがいいと思うんです。おおばや氏の不思議な魅力を出すときも、ボソッと変なことを言うのが良いなと思いました。あんまり強く言うとわざとらしくなるので、「なんか変なこと言ったな?」と思うくらいで。そこは佐藤さんも心得てくれて、結構ボソッとしてくれました(笑)。一方で、あんまりボソッとしすぎると、見ている方がわからなくなる。そこで矢本さんの良さが活きたと思います。佐藤さんが変なことを言って、矢本さんが「うん?」と反応すると、視聴者も一緒に確認できるんです。あとは、「ぼく」が調子づいて「こういうことですよね!」と言うと、「おおばや氏」が「いやちがいますよ」と冷静に否定するとか、「ぼく」が「おおばや氏」に若干振り回されているところも会話の楽しさにつながっていると思います。

Q:川西監督がお仕事をされる中で心がけていることがあればお聞かせください。

A:この仕事に入って最初に面白いと思ったのは、いろんな人の力が合体していくことでした。自主映画などをやっていた若いころは、自分の頭の中にあるものをいかに形にしていくかを考えていました。でも今は、プランナーがいて、カメラマンがいて、アートディレクターがいて、演者がいて、衣装デザイナーがいて…いろんなことが集結して、一本の映像ができあがる。この構造が面白いなと思います。技術の進歩で、一人でいろんなことを簡単にできるようになりましたが、一人のものづくりに逆戻りしてしまうと、面白いところが抜けてしまうとも思います。古いやり方にはこだわりませんが、自分の思い描いていたことを超える面白さを、チームの力で実現していきたいですね。

Q:最後に、監督の考える「つくるを拓く」について、今後つくり手として拓いていきたいことがあれば教えていただけますか?

A:最初の擬人化の話ともつながるんですが、「面白いモチーフだけど、どうやってつくればいいんだろう」という要素があるほうが、仕事は楽しいと思います。上がりがだいだい見えていてあまり不安がないものよりも、どうすればいいか悩むもののほうが、刺激があって面白い。多少の失敗のリスクは秘めていても、絶えずそういうものをやっていきたいと思います。あとは「いままで自分がつくってきたもののリメイクではない」ということを意識しています。同じことをやってもしょうがないですし、クライアントやモチーフが毎回変わる中で、自分がやってきた型に無理やりはめるようなことはしたくない。いつまでも「似て非なるもの」を追求していきたいですね。

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