プロジェクト最前線

西日本豪雨で寸断された道路の復旧に挑む

広島呉道路坂南IC~天応西IC間豪雨災害応急復旧工事、山陽自動車道(広島管内)豪雨災害応急復旧工事

2018. 12. 20

西日本に甚大な被害をもたらした平成30年7月豪雨。山から流れ出た莫大な量の土砂と樹木は、人々の生活拠点に大きな爪痕を残した。急ピッチで工事を行った「広島呉道路」と、被災後約一週間で応急復旧を達成した「山陽自動車道」の取り組みを追う。

広島呉道路豪雨災害応急復旧工事

広島市と呉市、そして東広島市をつなぐ道路網の一角を担う広島呉道路。クレアラインの愛称で親しまれているこの道路は、単に物品の搬送や主要駅、広島空港へのアクセス路であるだけでなく、観光客にとっては瀬戸内海を一望できる風光明媚(めいび)な旅の道となっている。

広島呉道路 坂南IC~天応西IC間の一部で、高速道路の区域外からの土石流により道路が崩壊したのは7月8日。西日本高速道路から当該箇所の応急復旧依頼を受けた広島呉道路災害復旧工事事務所の所長 境田は、現場を率いるために被災2日後に現地入りした。山から流れ出た大量の土砂と樹木が道路に溢れ返った光景を目の当たりにし、一刻も早い復旧を決意した。

広島呉道路豪雨災害応急復旧工事 工事区間
project53_11.jpg
大量の土砂と樹木が道路を押し流して、ガードレールだけが残った

早期復旧を実現するために

被害は、県内のみならず近接他県にも及び、重機と人員の確保は容易ではなかった。所長の境田は「広島支店の協力はもとより、本社の支援により確保できた」と当時を振り返る。

また、広島呉道路の通行止めにより、並走する国道では大渋滞が発生。撤去土の搬出に大きく影響することが予測された。そのため、発注者との打ち合わせにより、現場から目と鼻の先にある瀬戸内海を利用して、船で運搬する方法が採用された。船が接岸できるように防波堤の柵を撤去したことで、1回で1,000m³もの撤去土の運搬が可能になり、早期復旧の大きな力となった。

project53_15_2.jpg
瀬戸内海を利用して撤去土の船による運搬が可能になった

万全な体制でリスクを回避

着任早々、専門会社と崩れた山を調査した所長 境田は、さらなる崩落の危険性がある箇所を確認した。社員や作業員の安全を第一に考え、10分間で3mm以上の降雨があった場合、作業を中断して退避するという基準を定めた。そこで導入したのが、各々の携帯電話に警告メールが発信されるシステム。導入後4回の台風に襲われたが、工事関係者の安全は確保されている。

復旧作業は24時間体制だ。日勤・夜勤の2交代制で、12時間のうち4時間は打ち合わせや休憩に充てている。

「復旧現場は人の入れ替わりが激しく、社員間で引き継ぎができないこともある。そのため、毎日18時から行う全員参加の打ち合わせは、正確な情報を共有する貴重な場となっている」と所長 境田は話す。「早期復旧をめざして通常以上に頑張り過ぎてしまう現場こそ、休息が大事。気分の切り替えは、安全な作業にもつながる」と続ける。

project53_19_2.jpg
大量の土砂が崩れ落ちた道路断面を確認
道路復旧のため土砂を投入し、法面を復旧
道路復旧のため土砂を投入し、法面を復旧
project53_16_1.jpg
9月27日に本線の通行が再開。復旧完了に向けて道路周辺の作業が進む

緊張が続く状況だからこそ、所長の境田は毎日の現場巡視で一人ひとりへ声をかけ、何でも言い合える雰囲気づくりを心がけている。社員と作業員、また作業員同士の連携によって発言も活発になれば、各人が現場全体を把握できるようになるからだ。一日に多くのことをこなす復旧現場は展開が速く内容も濃い。早期復旧という同じ目的を持つ現場の一体感は、日々高まっている。

山陽自動車道豪雨災害応急復旧工事

project53_5.jpg
7月7日、山陽自動車道 志和トンネル(上り線)西側抗口前での現地調査

各所での土砂災害発生により通行止めとなった山陽自動車道。東西の大動脈が寸断されるとともに、被災地への支援物資の輸送も困難な状況となった。

7月7日、早期開通に向けて西日本高速道路から応急復旧の依頼を受けた広島支店は、社員を現地に急行させて工事に着手した。被害が最も大きかった、広島東IC~河内IC間33kmの本線に流入した土砂や樹木の量はおおむね2万~3万m³。それらを撤去するために、広島支店管轄の現場や協力会社のみならず、本社などの応援も受け、現場は24時間体制で復旧に挑んだ。

西日本高速道路が決めた最優先事項は、緊急車両の通行。まず取りかかったのは1車線を確保することだった。車線上の流入土砂などを移動する作業を、複数の被災箇所で同時に開始し、9日には1車線を、場所によっては2車線以上を確保できた。同日には緊急車両の通行も開始され、1車線しか確保できなかった所では両方向からの車両を交互に通行させる片側交互通行で対応した。

project53_12_sanyo_3.jpg
project53_8_1.jpg
サービスエリアの駐車場を現場の基地として使用 
project53_1.jpg
流入物を移動して1車線を確保

通行止め解除に向け、作業は連日24時間体制

project53_3.jpg
二次災害防止対策として大型土のうを設置
project53_7_1.jpg
7月10日の高屋JCT付近。早期復旧に向けて作業は夜通しで行われた

7月14日午前6時の通行止め解除に向け、同日午前3時までに人や重機などすべてを撤収するよう、発注者から事前に指示があった。それぞれの場所で直前まで作業を行っていた社員と作業員は、全員、指定された時刻前には撤収することができた。

「連日24時間体制の厳しい作業であったことに加え、複数箇所での現地解散だったことから、撤収当日は社員全員に帰宅報告を義務付けた」と語る広島支店土木工事部部長の栗林。全員帰宅完了の連絡を受け、ようやく8日間の復旧工事が完了した。

(取材2018年9月)

広島呉道路豪雨災害応急復旧工事 概要

名称 広島呉道路坂南IC~天応西IC間豪雨災害応急復旧工事
場所 広島県安芸郡~呉市
発注 西日本高速道路
設計 西日本高速道路
概要 施工延長約80m、崩壊土量約1万3,000m³、盛土工・本線舗装工一式
施工期間 2018年7月10日~11月20日
施工 大林組

山陽自動車道豪雨災害応急復旧工事 概要

名称 山陽自動車道(広島管内)豪雨災害応急復旧工事
場所 広島市~東広島市
発注 西日本高速道路
設計 西日本高速道路
概要 施工延長33km(内 災害復旧7ヵ所)、搬出土量おおむね2万~3万m³、交通安全施設一式
施工期間 2018年7月7日~26日
施工 大林組

ページトップへ