大屋根の軒天パネル取り付け装置「アップスライダー」を開発

軒天パネルの運搬・上昇・微調整を装置1台で行い工期短縮とコスト削減を実現します

プレスリリース

株式会社大林組(本社:東京都港区、社長:白石達)は、現在施工を進めている新青森県総合運動公園陸上競技場新築工事(施工場所:青森県青森市)の軒天(のきてん)パネル設置工事において、クレーンやウインチを使用せず、軒天パネルを下方から持ち上げて取り付けることにより、工期短縮とコスト削減を実現する軒天パネル取り付け装置「アップスライダー」を開発しました。

軒天パネル取り付け装置「アップスライダー」

軒天パネル取り付け装置「アップスライダー」

新青森県総合運動公園陸上競技場 完成イメージ(提供:伊東豊雄建築設計事務所)

新青森県総合運動公園陸上競技場 完成イメージ(提供:伊東豊雄建築設計事務所)

屋根の天井面(裏面)で外部に面した部分を「軒天」と呼びます。軽量な軒天パネルは下方から持ち上げて取り付けが可能ですが、本工事で用いるGRC(ガラス繊維補強セメント)製の軒天パネルは重量があるため、取り付けにはクレーンやウインチといった上方から吊り上げる機械設備が必要でした。

しかし、本工事でクレーンやウインチを使用した場合、大屋根の鉄骨と軒天パネルを吊り上げるためのワイヤーが干渉するため、作業効率の悪化が予想されました。

また、軒天パネルの形状が複雑で吊り上げ時の姿勢を精度よく制御することが非常に困難なことや、軒天パネルの取り付けが完了するまで大屋根上部の防水工事に着手できないなど、屋根工事全体の工程が長期化する懸念もありました。

今回開発した軒天パネル取り付け装置「アップスライダー」は、パネルの運搬、上昇、微調整を1台で行うため効率のよい作業が可能で工期短縮が図れるうえ、仮設設備の規模縮小などによるコスト削減効果もあります。

また、取り付けるパネルの形状を問わず、下から保持したまま安定して上昇させるため作業の安全性が向上するとともに、作業の省人化にも貢献します。

本工事の前に実施した試験施工では、クレーンでの作業と比較し約30%の工期短縮、コスト低減効果を確認しました。

「アップスライダー」の特長は以下のとおりです。

  1. 装置1台で運搬、上昇、微調整を行い、工期短縮とコスト低減を実現

    「アップスライダー」の移動機構と固定機構

    「アップスライダー」の移動機構と固定機構

    エアキャスターの下部

    エアキャスターの下部

    本装置は、移動機構、上昇機構、固定機構、微調整のための機構で構成されています。

    重量のある軒天パネルを、取り付け位置の直下まで運搬するための移動機構には、エアキャスターを採用しました。圧縮空気を装置下部へ送り、床面との間に薄い空気層を形成することで接地面の抵抗を大幅に低減し、約6.0tの装置全体の移動を作業員2~4人で自在にコントロールできます。

    上昇機構には、2.8mまで持ち上げられるシザー式テーブルリフトを採用しており、スムーズに軒天パネルを上昇させることが可能で、床面から約5.0mの高さまで軒天パネルを取り付けることができます。

    そのほか、固定機構で装置を作業床に固定し、軒天パネルの水平位置・向きを微調整する水平微調整機構や軒天パネルの四隅の高さをそれぞれ調整できるレベル調整機構により、取り付け直前の微調整が可能です。

    「アップスライダー」を使用した軒天パネルの施工試験を行ったところ、取り付けのサイクルタイムは、クレーンやウインチを使用した場合と比較して、約30%短縮できることを確認しました。

    また、大屋根の下方で独立して作業を行うことができるため、防水工事など大屋根上部の工事を並行して進めることができ、工期短縮に大きく貢献します。さらに、試算の結果、クレーンやウインチを使用した場合に対して、関連する仮設工事費用を約30%低減できることを確認しました。

  2. 複雑な形状の軒天パネルの取り付けが可能

    取り付けられた軒天パネル

    取り付けられた軒天パネル

    取り付ける角度や向きに合わせた姿勢で軒天パネルを装置にセットできるため、複雑な3次元形状を有したものや大きく傾斜したものであっても、取り付け位置の真下に設置した装置を垂直に上昇させるだけで、効率よく取り付けができます。

    また、水平微調整機構やレベル調整機構により、わずかなずれに対しても取り付け時に微調整することができます。

  3. 軒天パネルを安定して上昇させることで作業の安全性が向上

    クレーンやウインチを使用して取り付けレベルまで揚重する場合、軒天パネルは吊られた状態であるため、風の影響などにより常に揺れが生じます。「アップスライダー」を使用する場合は、軒天パネルを下からしっかり保持したまま安定して上昇させるため、作業の安全性が大幅に向上します。また従来は、パネル1枚を設置するために6~7人の作業員が必要でしたが、本装置を使用すれば4~5人で作業を行うことができ、作業員の省人化にも貢献します。

大林組は、今回開発した軒天パネル取り付け装置「アップスライダー」を、本工事だけでなくショッピングモールや駅舎、オフィスビルのエントランスなどでクレーン作業が困難な場合などに活用していく予定です。また、センシング技術を用いて装置の位置決め作業を自動化するなど、機能追加によりさらに生産性を向上し、建設物をより早くお客様に提供するための技術として活用してまいります。

新青森県総合運動公園陸上競技場 完成イメージ(提供:K+C STUDIO)

新青森県総合運動公園陸上競技場 完成イメージ(提供:K+C STUDIO)

以上

この件に関するお問い合わせ先
大林組 CSR室広報部広報第一課
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