[PHASE2] ものづくりの視点から設計にフィードバック
同じ頃、服部道江は、本社の生産設計部でこの大プロジェクトの人員計画を練っていた。
「壮大かつ困難なプロジェクトになることはわかっていたので、出来る限りの支援をしようと思っていました。ところが、いつの間にか自分が副所長として配属されていて本当に驚きました(笑)」
生産設計とは、いわば設計と施工の橋渡しの役目を担う仕事だ。施工の仕事は、設計者が描く設計図で行う——そう考える人は多いだろう。ところが、実際には設計図に施工性や経済性などを盛り込んだ工事用の図面(施工図)がないと建物は建たない。
服部たちのミッションは、設計者の意図に沿いながら、その施工図をつくり上げることだ。世界一の高さゆえの施工の困難さに加え、工事に与えられた時間には余裕がなく、工期は非常にタイトなものになっていた。

工期から逆算した工程を睨みながら、設計者と議論を繰り返す日々のなか、服部のもと3人の工事長がチームとなって、塔体部、展望台、ゲイン塔の施工図の作成を進めた。
その一人、塔体部の施工図作成を担当する大家摂子は、鉄骨製作会社の会議室で、議論を交わす日々を過ごした。
「鉄骨製作会社と意見が異なり、ときに議論が激しくなることもありました。しかしそこには、それぞれの立場で世界一のプロジェクトを成功させるんだ、絶対にやり遂げるんだ、というムードが常にありました。だからこそ、多くの議論を繰り返しても、同じ気持ちでみんなが課題の克服に協力できたのだと思います」
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