同じ頃、土木担当の岡部一隆は、工事が鉄道軌道に与える影響を調べるために、動態計測と管理・評価・分析を行っていた。
東京スカイツリーは、東武スカイツリーライン(旧東武伊勢崎線)と都営浅草線の営業線に近接して工事を行う。工事が原因で軌道が数ミリ動いただけでも鉄道の運行に支障をきたす恐れがあるため、工事による周辺環境への影響は厳しく管理される必要があるのだ。
「本社の技術部門と連携してデータ解析を行い、その評価をもとに対策を立てるのが私に任された仕事です。このプロジェクトに抜擢されたときは、正直、“なぜタワーの建設に土木の技術が必要なのか?”と思いましたが、実際に現場に着任してそんな疑問は消えました。世界一のタワーを支えるには、しっかりとした基礎が不可欠で、そこに土木の技術が活かされるのです。この大プロジェクトに携わり、改めて土台の重要性を技術者として実感しました」
2008年7月14日。現場事務所に着任した事務長の中河和久は、さっそく事業主やマスコミなどの社外関係者の対応に奔走していた。日本中が注目するビッグプロジェクトが、いよいよ着工したのだ。
通常、現場に配属される職員は10名前後なのだが、そのときすでに30名近く。中河はこれが前例のない大規模プロジェクトであることを実感する。
「これまでにない大きなプロジェクトですから、当然、非常に多くの人が関わります。プロジェクトを成功させるためには、工事に携わるメンバーのベクトルを合わせること、みんながそれぞれの役割を果たせる環境をつくることが重要になってきますが、それに加えて私は、常にジャスト・イン・タイムで的確な判断を下していくことを心がけています。プレッシャーが大きい分、やりがいを一層強く感じられる現場だといつも実感しています」
閉じる