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2015.09.15

新宿駅南口地区基盤整備事業、新宿駅新南口ビル(仮称)新築工事

新宿駅南口の「まち」が見えてきた
新宿駅南口地区基盤整備事業、新宿駅新南口ビル(仮称)新築工事

新宿駅南口の「まち」が見えてきた

世界最多の乗降者数を誇るJR新宿駅。その南口一帯が大きく変貌を遂げようとしている。新宿跨線(こせん)橋の架け替えをはじめ、人工地盤と駅舎、超高層ビルの一体的な整備によって、新たな都市空間が生まれる。15年もの歳月がかけられてきた一大プロジェクトだ。大林組が代表を務める新宿駅JV、新宿駅建築JV、新宿駅新南口ビルJVの3JVが施工を担当している。

人工地盤、駅舎、高層ビルの3つのプロジェクトが進む
人工地盤、駅舎、高層ビルの3つのプロジェクトが進む

新宿跨線橋上の国道20号は、橋の耐震化を目的とする架け替えによって幅員が30mから50mに広がった。この道路や新宿駅のホームとつながる新たな駅舎を建設するために、線路上空に約1.5haの人工的な地盤も構築。人工地盤上の建物は7階建てで、駅施設や歩行者広場のほか、タクシー乗降場、高速バスターミナル、多目的ホールなどが入る。

そして隣地の旧新南口駅舎跡地に施工しているのは高さ約170m、32階建ての複合ビルだ。中、高層階のオフィスフロアをメーンに、低層階には商業施設、地下には駐車場を備える。

もともと南口付近は一日当たり40万人もの駅利用者と6万台の車両が行き交う交通の要衝で、橋上での渋滞解消や接触事故の防止、歩行者の安全確保が喫緊の課題となっていた。

そこで、利便性を高めた駅舎、タクシーやバス関連施設となる駅前空間を整備するとともに、広場を設けるなどして駅周辺の回遊性を向上させることで、問題の抜本的な解決が図られようとしている。
 

「新宿駅南口地区基盤整備事業」と「新宿駅新南口ビル(仮称)新築工事」の施工エリア断面図

「新宿駅南口地区基盤整備事業」と「新宿駅新南口ビル(仮称)新築工事」の施工エリア断面図

10年の歳月をかけた地盤構築

16本の線路、八つのホームを覆うように人工地盤を構築した新宿駅JV。現場には2006年1月の着工以来、約10年間で延べ50万人の作業員と職員が関わってきた。現在は最も東寄りの埼京線直下で、駅の設備などを収容する地下躯体を構築中だ。

場所打ちした161本もの杭が人工地盤を支える。基礎杭は線路と線路の隙間を通して、深度20mの支持層まで挿入。土の安定度を上げる目的で薬液を注入する際、地面が隆起して軌道に支障を与えないよう変位を測定しながら慎重に施工が進められた。

埼京線直下では緊密な配筋による基礎工事と大径の支柱構築が進む

埼京線直下では緊密な配筋による基礎工事と大径の支柱構築が進む

現場を取り仕切る所長の大木は、一連の工事に工事長時代から携わってきた4代目所長。この10年を「毎朝の初電を無事に見送ることに神経を割いてきたようなもの」と述懐する。鉄道近接工事のため、施工は列車が運行されない深夜の4時間程度に集中。プレッシャーの中、限られた時間で工程をこなすための周到な準備と作業手順の確認に一切の妥協を許さず取り組んできた。

3JV間の高度な連携を展開
左から、新宿駅建築JV所長 田子、新宿駅新南口ビルJV所長 北野、新宿駅JV所長 大木

左から、新宿駅建築JV所長 田子、新宿駅新南口ビルJV所長 北野、新宿駅JV所長 大木

軌道の変位管理

軌道の変位管理

駅舎を担当する新宿駅建築JVの所長田子は、3JVの高度な連携を重視する。取り合い箇所の施工はその代表例。実は人工地盤、駅舎、ビルは構造的につながっており、これを3JVで分担施工している。そのため、必然的に取り合い部の施工が発生する。

例えば駅舎とビルの境界では、先行する駅舎側の鉄骨を補強鉄骨でつり上げておき、後から立ち上がってきたビルの鉄骨で受け止める。軌道の変位管理もその最たる例だ。

左図のとおり、ビルの連壁杭と人工地盤の連壁は接しており、ビルの施工が進捗して杭に荷重がかかると、人工地盤直下の軌道にも影響して列車の運行に支障を来たす恐れがある。これを防ぐため、新宿駅JVが連壁杭上の柱に設置した鉛直変位装置で動きを24時間監視し、必要な場合はジャッキで数ミリ単位の変位調整を行う。JV同士の緊密な関係性。所長たちは3所長会議で入念に工程を調整しながら、施工を前進させている。

駅舎の工事では電気、空調、エレベーターといった各設備工事は専門会社に別途発注されており、受け渡しなどの細かい調整にも多大な労力を要している。しかし所長の田子は「困難な仕事になればなるほど総合力を発揮して乗り切れる。お客様の信頼に応えていかなければならない」と気を引き締める。

先工区と後工区で進むビル建設
新宿駅新南口ビル(仮称)では、先工区を追いかけるように後工区の鉄骨建て方が進められた

新宿駅新南口ビル(仮称)では先工区を追いかけるように後工区の鉄骨建て方が進められた

外壁カーテンウォールの取り付けには協力会社と共同開発した「外装揚重システム」を活用

外壁カーテンウォールの取り付けには協力会社と共同開発した「外装揚重システム」を活用

新宿駅新南口ビル(仮称)は3月19日に上棟式を執り行った。もちろん躯体は1棟の建物に仕上がっている。だが内に入ると、一風変わった様子がうかがえる。駅側3分の1のエリアの進捗がほかと明らかに違っているのだ。

このビルは先工区と後工区の2段階で工事が進められている。新宿駅新南口ビルJVの所長北野は、「敷地の一部を新宿駅JVの作業ヤードに提供するため、3分の1は半年ほど着工時点がずれている」と特殊な事情を明らかにしてくれた。鉄骨を組んでいる段階では一見すると段差のある建物のようだった。今後、仕上げ工事が本格化するにつれ進捗の差を徐々に小さくしていく計画だ。

現場は、荷さばき場が狭い仮設構台に限定されていたり、鉄骨の納期が遅れるトラブルに見舞われたりして工程管理に苦労していたが、こうした状況を知恵や工夫で乗り切ろうとしていた。

躯体の周囲に敷かれたレール上を移動するテルハクレーン。所定の位置まで外壁カーテンウォールをつり、作業員が取り付けを行っていた。虎ノ門ヒルズの施工で高い生産性を発揮した「外装揚重システム」だ。外壁を伝ってカーテンウォールを垂直、水平方向に搬送して取り付けるもので、施工経験のあった職員のアイデアを採用した。「一人ひとりの経験値が施工に推進力をもたらす」。所長の北野はこうした取り組みを積極的に取り入れている。

安全施工で社会的使命を果たす
定例会議時に実施する安全教育は1時間以上におよぶことも

定例会議時に実施する安全教育は1時間以上に及ぶことも

「安全」。それはこの現場の最重要課題であり、絶対的な目標である。朝礼時には全員で、発注者である東日本旅客鉄道の安全行動を唱和。定例会議でも半分の時間を安全教育に割くなど、常日頃から安全の意識を高めて施工に臨んでいる。

一言で安全と言っても中身は多様だ。列車の運転に支障を来さない、感電事故や火事を起こさない、通行人にけがを負わせない、もちろん労働災害もあってはならない。ありとあらゆる災害の予防を徹底することが求められている。

所長の田子は「先を読む仕事のやり方を継続することが重要」と語る。例えば軌道近くに仮囲いを設置する場合でも、列車の運転士の視覚的な影響などを考慮して、数ヵ月前から発注者と念入りに検証して適切な対策を施す。将来の施工に対してリスクを洗い出し、やるべきことを計画に落として着実に実行していくことが安全施工を可能にするのである。

しかし、言うはやすしで決して簡単なことではない。大勢の人間が関わっている以上、ヒューマンエラーは付きまとう。所長の大木は「巨大ターミナルの中で工事をさせていただいている感謝の気持ちが大切」と説く。一人ひとりにこうした意識があれば、安全確保に対してやるべきことを見失わず、リスク管理や計画の確実性につなげることができる。

2016年には新宿駅の南口に新たな「まち」が誕生する。社会的に意義深い工事の完成に向け、3JVの総合力が発揮される。

昼夜二交代制、総勢100人を超す大林組の職員

 

●工事概要

名称:新宿駅南口地区基盤整備事業

場所:東京都渋谷区

発注:東日本旅客鉄道(国土交通省東京国道事務所との共同事業)

設計:東日本旅客鉄道、ジェイアール東日本建築設計事務所、ジェイアール東日本コンサルタンツ

概要:
(人工地盤、地下部)基礎杭2,492m、鋼管回転圧入杭472m、PC工事桁474m、
鋼製工事桁21m、合成床版8,409m²、掘削土量4万1,763m²
(上部躯体工事他)S造一部SRC造、B2、7F、延べ3万3,715m²

工期:
(人工地盤、地下部)2006年1月~2015年10月
(上部躯体工事他)2009年8月~2016年10月

施工:大林組、鉄建建設、大成建設、大和小田急建設

 

 

名称:新宿駅新南口ビル(仮称)新築工事

場所:東京都渋谷区

発注:東日本旅客鉄道

設計:東日本旅客鉄道、ジェイアール東日本建築設計事務所、ジェイアール東日本コンサルタンツ

概要:S造一部SRC造、制振構造、B2、32F、PH2F、延べ10万7,009m²

工期:2013年8月~2016年4月

施工:大林組、大成建設、鉄建建設

 
 

※プロジェクト最前線「新宿駅南口の「まち」が見えてきた」は2015年3月に取材した情報をもとにしています