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解説
水をたたえた宇宙船が降り立った類のない複合施設
オアシス21は、都市環境と情報が融合する21世紀の都市公園をめざしたものである。隣接する愛知芸術文化センターとNHK名古屋放送センタービルにつながるなだらかな地上公園の下に、バスターミナルと地下広場、店舗街を立体的に内包し、地下広場の上部にはシンボルである大屋根「水の宇宙船」を配した類のない複合施設である。
名古屋市の中心部の栄公園は老朽化し、旧愛知県文化会館、旧NHK名古屋放送会館の建替え計画を機に、両施設と敷地を入れ替えて再整備することとなり、1997年に設計提案競技が実施された。その結果、当社の応募案が最優秀賞となり、工事を受注した。
この施設のシンボルであり、全長106m、幅36mの巨大な構造物である「水の宇宙船」は、宇宙船が浮遊する無重力状態のイメージを具現化するため、組み立て式のカヌーの構造を引用し、フィーレンデール架構と張弦梁による軽快でスレンダーなフォルムとしている。地下広場は、展示会・コンサート・スポーツなどのイベントにも対応し、市民の情報発信の場となるよう設計されている。環境に配慮し、地下広場の自然換気と自然採光の導入、雨水再利用や井戸水の活用、太陽光発電、夜間電力の使用などの省エネルギー手法を積極的に採用した。さらに当社開発の細霧冷房システムやビル統合管理システム「FRiGATE」も導入されている。
工事は地下の既設建物の解体から始まり、20万㎥に及ぶ掘削工事を経て、躯体工事に取りかかったが、一番のポイントは「水の宇宙船」をいかに建設するかであった。長さ100mを超える楕円形をした大屋根を4本の鉄骨鉄筋コンクリート造の柱で支える構造だが、鉄骨の組み立てにおいては、運搬方法、現場で仮受けベントの配置計画など、知恵を出し合い、事前に実物大のモックアップを作成して検証を行った。大屋根はガラス面に水を張った設計のため、強化ガラスを2枚貼り合わせたジョイントを2重シールとし、そのガラス面の下に樋ゴムを設置した3重の漏水防止対策を施した。
施設は公募により「オアシス21」と命名され、2002年10月オープン。夜間にはライトアップされ、幻想的な空間を演出している。
2002年度日本照明学会照明普及賞(優秀施設賞)、2003年グッドデザイン賞(建築・環境デザイン部門)を受賞した。