大林組100年史

1993年に刊行された「大林組百年史」を電子化して収録しています(1991年以降の工事と資料編を除く)。
なお、社名・施設名などは、刊行時の表記のままとしていますので、あらかじめご了解下さい。

発刊の辞

当社は平成3年(1991)、創業100年を迎えました。明治25年(1892)1月、創業者大林芳五郎が大阪の地で大林組を興し、それから、明治、大正、昭和、平成へと時代を継ぎ1世紀という歳月を刻みました。その100年は、まさに近代国家へと歩み出したわが国の歴史とともにありました。

明治維新後、先進欧米諸国に追いつくため富国強兵・殖産興業が国是とされ、軍事・社会資本の充実が図られ、諸産業が次々と勃興するに伴い、建設業はにわかに活躍の場を得たのでありますが、それは、産業としての起業のチャンスと成長の期待を与えるものでもありました。

芳五郎は、志を立て建設業とは全く無縁の身でこの業界に入り、その生涯をかけて当社の基礎を築き上げました。時代への先見性、仕事への情熱、強い社会への使命感、「良く、廉く、速く」をモットーに進取積極にして誠実な施工に徹する生き方は、多くの人々の信頼を集め、各界に心強い後援者と、内部には柱石となる人材とをもつことになったのであります。

土木建築の個人請負業に始まった当社は、諸産業の工場・事務所の建築をはじめ港湾・鉄道などの建設事業に携わり、しだいに企業としての体制を整え、全国規模の業者としてその地歩を固めてまいりました。経営組織の近代化への努力、技術向上への取組み、未知への挑戦を恐れない開拓者精神、そして内部の固い結束は当社の伝統として形づくられ、現在に脈々として流れ当社の発展を支えてきたものと確信しております。

大正、昭和初期の一時期を過ぎると、国勢は一気に戦時体制へと傾き、当社も軍関係工事に追われることとなりました。そして、多くの犠牲を払った太平洋戦争が終結すると、未曾有の混乱のなかで、当社はいち早く祖国復興を期して数々の土木建築工事に従事し、あわせて自らの企業再建へと立ち上がりました。その後わが国は、驚異的ともいえる経済発展を遂げ、国際社会においても少なからぬ影響力をもつに至ったのであります。

明治以降、他に例をみないほどの速さで変貌し激動した歴史を経験しましたが、今後もその流れは止まることはないでありましょう。創業以来、当社は建設業者が生命とする技術の向上、誠意ある施工などによって社会の信用を高め経営基盤を強化するとともに、その事業を通じて地域社会や産業の発展、そして国民の生活環境の向上にいささかなりとも貢献することを念じつつ、また海外にも積極的に事業を広げて、日本を代表する建設会社の一つとして発展してまいりました。

しかし、ここに至る道は決して平坦な道ばかりではありませんでした。幾度かの危機に遭遇しながらもそれを乗り越えて今日がありますのは、ひとえに、内外のお得意先をはじめ関係各位の温かいご支援とご愛顧の賜であり、さらに当社の伝統を築き育ててきた先人達の熱意と真摯な努力によるものであります。創業100年にあたってその歴史をあらためて思い起こし、ここに深い感謝と敬意を表する次第であります。

いまや、世界の情勢は刻々と変化し、ここ数年好景気に沸いたわが国経済にも、“バブル”の崩壊にたとえられる転換期が訪れ、時代は新しい秩序の形成に向かって進み出しております。当社はこの大きな歴史の節目に当たり、次世紀へのさらなる発展を期してCIを導入し、長期経営ビジョン「大林ルネッサンス111」を策定して新たな挑戦を開始いたしました。そしてわたくしどもは、今後とも先人に劣らぬ研鑽努力を重ね、過去1世紀に築かれた伝統の上に新しい時代にふさわしい社風を築き上げ、幅広い社会のニーズに応えていこうと強く決意いたしております。皆様におかれましては、一層のお引き立てを賜りますようお願い申し上げます。

創業100年を記念して発刊いたしました本書が、新しい出発の一里塚になるとともに、当社をよりご理解いただくよすがとなりますことを願いまして、発刊のご挨拶とさせていただきます。

平成5年5月

代表取締役会長 大林芳郎 代表取締役社長 津室隆夫
代表取締役会長 大林芳郎 代表取締役社長 津室隆夫
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