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解説
西日本初のシールド工法による道路トンネル
稲荷山トンネルは、阪神高速8号京都線のうち、京都市中心部と山科区を結ぶ延長約2.7kmのトンネルである。このうち、当社JVは開削工法区間85mの十条第1工区と伏見区内深草相深町から稲荷山までのシールド工法区間855mの伏見工区を施工した。
トンネル部には、地盤沈下や地下水枯渇などの周辺環境への影響を考慮してシールド工法が採用された。シールド工法による道路トンネルは、東京湾アクアライン、首都高速道路中央環状新宿線に続いて国内で3例目、西日本では初の試みであった。
シールド工事は、1台の大断面シールド機で土砂部と破砕帯を含む岩盤部を掘進し、NATM工法で切り拡げられた拡幅断面内で1,600tのシールド機をUターンさせ、再発進して立坑まで掘進するものである。施工条件は、琵琶湖疎水の直下を離隔4.4mで通過し、京阪電鉄本線とJR奈良線の直下を防護工なしで横断するという厳しいものであった。加えて、JR奈良線以東は500mにわたって民家密集地帯の直下を通過するため、地盤変状を抑制する高度な掘進管理を必要とした。
2006年1月、シールド機が発進。琵琶湖疎水と2本の鉄道線を横断する際には、自動計測システムによる情報化施工を用いた。民家密集地帯直下の掘削では、細砂層でシールド機が胴締め状態となり推力が急上昇する現象が生じたが、余掘の調整で摩擦力を低減することで対応した。層境部で土砂用ビットから岩盤用ビットに交換した後、残り16m地点で緩い砂岩層に遭遇、切羽上部が崩壊して土砂搬出不能となったが、到達側からズリ用の導坑を設置することで問題を解消し、貫通することができた。到達したシールド機はボールスライダー工法によってUターンさせ、再発進の後2007年12月に復路の掘進を完了した。
本工事では、耐火工として一部区間で耐火機能付きセグメントを日本で初めて採用、余剰泥水にセメントを混ぜた流動化処理土をトンネルの路床材として再利用、産業廃棄物を減量化し、3R推進協議会から表彰を受けた。