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解説

台湾の地に「夢の超特急」を走らせる

台湾第一の都市・台北市と第二の都市・高雄市の間343kmを約1時間半で結ぶ台湾新幹線の建設計画は、台北都心部を除く326kmの区間が12の工区に分割され、設計施工一括の国際入札が行われた。そのうち台北側の210工区(区間11km)と215工区(区間40km)の2つを、当社(スポンサー)は現地建設会社とのJVにより受注した。また、全線の5分の2となる約140kmの軌道工事を受注した。

工事は、台湾人監督者、イギリス人技術者、ドイツ人設計者、フランス人橋梁業者、イタリア人トンネル業者、フィリピン人検査官、タイ人作業員、日本人を含め20ヵ国以上の人が集まり、さながら土木工事のワールドカップと呼べるような国際色豊かな現場となった。それぞれの国流の考え方とプライドがせめぎ合う状況の中、当社担当者が迅速に判断を下しながら工事が進められた。

実質3年で主要構造物の施工を完了する必要があり、高架橋を効率良く施工するために、プレキャストスパンメソッド工法を採用した。長さ30m、重さ780tのUタイプ箱桁を路線近くに新設したプレキャスト工場で製作し、巨大な運搬台車と移動式仮受け鋼製桁を使って一括して架設するものである。1スパンあたり1日のスピード施工を実現し、全長30kmの高架橋部分のうち、20kmをこの工法で施工。工期短縮とコスト削減に大きく貢献した。

担当工区内の6つのトンネル部は、軟弱、高水圧の土砂山をNATM工法で施工した。機械掘削による上半先進ロングベンチ工法を主体に、ズリ出しは重ダンプトラック仕様のタイヤ方式で行った。NATM工法では軽量で取り扱いが容易なラチスガーダーを主要支保材とした。160㎡以上の掘削断面をパイプルーフや水平ジェットグラウトの先受けなどの補助工法を併用して施工したが、大きな変位と高水圧に苦労した。桃園3号トンネルでは2001年9月の台風によってもたらされた記録的な豪雨で、土砂崩れが発生した。一般道路から現場への進入路が寸断され、水道・電気もストップし、復旧に1週間を要した。

軌道工事は、出来上がった高架橋、トンネル、路盤に路盤コンクリートを打設、その上にプレキャスト製の軌道スラブを製作・設置するもので、製作工場を新設して製作された1枚約4tの軌道スラブの総数は約2万5,000枚に達した。

2003年5月、SARS(重症急性呼吸器症候群)が発生し、2,000人を超えるタイ人作業員が台湾を離れると言い出し、引き留めるのに苦労した。

そして2007年1月、ついに台湾新幹線が開業の日を迎えた。地平線まで続く長い高架の上を、日本の新幹線「のぞみ(700系)」を改良した「700T」が駆け抜けていく。「夢の超特急」が台湾の地に完成した。

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