トンネルをつくる人たち Tunnel Construction Professionals

シールドトンネル編

広島高速5号線JV工事事務所 副所長 日高 基裕

広島高速5号線JV工事事務所 副所長日高基裕

「スペシャリストとしての誇りと責任」

タフでデリケートな難工事

施工中の広島高速5号線は、JR広島駅北口から温品ジャンクションの間を結ぶ約4.0kmの路線です。JR広島駅北口側に約1.8kmのトンネルがあり、そのうちの約1.4kmをシールド工事で掘進しています(2021年10月現在)。

建設地の地盤は堅硬な花崗岩の岩盤であるうえに、掘進時には最大で水深130mと同程度の水圧がかかるといった厳しい条件下にあります。また、住宅地の直下を掘り進めるにあたり、地盤沈下対応の基準も本工事では2.4mmと、従来にない極めて厳格な数値が設定されています。

これまで私は7つの現場で17本のシールドトンネル工事に携わってきていますが、技術的にみて最も難しい工事であることは間違いありません。

豊富な経験を積んだ「シールド屋」としての自負

2002年の名古屋での工事を皮切りに、約20年間ずっとシールド工事に関わってきました。その中にはタイやアラブ首長国連邦、シンガポールでの合計7年ほどの海外勤務も含まれており、特にタイのバンコクでは工事自体の難しさに加え、スタッフ管理の大変さを痛感しました。

現地では人材を雇うだけでもひと仕事なのですが、その後に言語の壁を越えて未経験者に仕事を教える苦労があります。また、頑張って育成した人材を条件の良いほかの会社に引き抜かれることも珍しくありません。このような体験が積み重なり、徐々にリーダーシップが備わっていったのではないかと感じています。

現場経験を積み重ねるにつれ「シールド屋」としての自負も芽生えてきましたが、プロフェッショナルであるためには経験だけでなく知識も兼ね備えていなければならないと考え、資格取得に挑戦。4年かけて技術士(建設部門トンネル)の資格を取得しました。

さらに、前回の現場ではそのスキルを実務に活かし、工事をより効率的にできる工法を開発して特許を取得。経験と知識が理想的な形で実を結んでくれました。

広島高速5号線JV工事事務所 副所長 日高 基裕
施工管理のプロフェッショナルであるための努力と心構え

世の中に施工管理者と呼ばれる人は数多く、仕事への向き合い方も人それぞれだと思いますが、私はプロの施工管理者である以上、次の3つの点が大切だと考えています。専門知識と責任感、そして問題解決能力です。

設計や測量を外注することがありますが、専門知識がないとその妥当性を確認できません。トンネル工事についても、仕事を通じて得られる知識の範囲には限界があるので、日頃からテリトリーを超えて自己研鑽(けんさん)する姿勢が大切です。また、予想外のことが起こりうる地下の危険性や、わずかなミス一つで大勢の仕事が止まってしまう大規模工事であることを踏まえると、自身の指示や行動には常に大きな責任が伴うことを忘れてはなりません。

さらに、現場では大小さまざまなトラブルが発生しますが、その多くはこれまでに経験していない事象です。問題を速やかに解決するためには、発生事象の整理・原因究明・対策の立案と、物事を順序立てて考える論理的思考能力が不可欠だといえます。

貫通のうれしさを地域の人と味わいたい

今回の工事は自己の経験のなかでも最も工事期間が長く、技術的にも高度なものが求められる難工事です。どの現場でも貫通したときの達成感は得も言われぬものがありますが、この現場はひとしおでしょう。
地域住民の皆様と一緒に完成の喜びを分かち合えたら何よりですね。