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解説

世界初の大規模コンクリートシェル構造を採用した地下体育館

大阪市港区の八幡屋公園を空から見ると、大小二つの円墳が見える。1997年の「なみはや国体」の主会場の一つとして整備された大阪市中央体育館である。

最大の特徴は、最大1万人収容のメインアリーナを中心に、サブアリーナをはじめすべての施設が地下に設けられていること。屋根部分は平均1mの土と植栽に覆われ、起伏に富んだ緑豊かな公園となっている。

この膨大な荷重を支えるのは、日本初の大規模コンクリートシェル構造による屋根である。直径110mのメインアリーナのドーム屋根と盛土を支えるのは、屋根の周囲に構築されたテンションリングで、リングの内部には2万tの力で緊張させた30本のPCケーブルが巻かれ、屋根を横方向に締め付けて支えている。荷重を圧縮力として均等に下方向に分散させるのが、屋根上部に取り付けられたコンプレッションリングで、二つのリングの働きによって屋根は安定し、巨大な空間を作り出している。地震に対しても、テンションリング下部に取り付けられたシェアキーと呼ばれる歯によって水平力に抵抗する。この歯の間に挿入された積層ゴムによって総荷重7万tを支え、円の中心方向に自由に動ける構造となっている。直径52mのサブアリーナも同じ構造を持っている。

このような大荷重・大スパンのシェル構造は世界でも例のないもので、当社の技術部門の総力を挙げて施工を進めた。PCケーブルの緊張作業は、常に荷重、緊張の状態を計測しバランスを考慮しながら3回に分けて慎重に行われた。

工事終盤、阪神・淡路大震災に罹災したが被害は最小限にとどまり、4月の引き渡しに間に合わせることができた。こけら落としとなった「世界女子バレーボール選手権大会」が無事開催され、工事関係者全員で喜びを分かち合った。

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