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解説
大阪城天守閣「平成の大修理」
大阪のシンボルとして親しまれている大阪城天守閣が、1931(昭和6)年に再建されて以来、初めての改修工事「平成の大改修」を完了し、輝きを取り戻した。
大阪城は1585(天正13)年に豊臣秀吉が創建、大坂夏の陣(1615(元和元)年)で炎上した後、2代目は1626(寛永3)年再建されたが1665(寛文5)年落雷のため焼失、以後、大阪城には天守閣がない時代が長く続いた。3代目、鉄骨鉄筋コンクリート造、5層8階建、地上高174尺(53m)の天守閣は、1931(昭和6)年、市民からの寄付を資金として、当社施工によって再建された。
今回の大改修の目的は、再建時の姿の復元と耐震性の向上、展示施設の充実を図るものである。屋根は銅版瓦約55,000枚を一時撤去し、古緑青の味わいを活かすため清掃・補修し、傷みのひどい約2割は交換することとした。巴、唐草瓦は金箔押さえをして、新規に製作した。外壁と軒裏の約5,100㎡の壁面は、中性化したコンクリートを電気的に再アルカリ化した。伏虎八態と鯱八基は一時撤去し、補修を行い、ほかの錺金物についても半数が再使用不可能だったため、新規に製作した。内部は既設仕上げ材を全面撤去とし、収蔵庫・展示ケースを新設し、エレベータも8階まで延長した。
耐震補強工事は天守閣の柱の約半数に当たる104本で実施し、当社が開発したCRS工法を採用したほか、鋼板耐震壁(16カ所)、梁せん断補強(166カ所)を行った。阪神・淡路大震災後の時期でもあり、耐震工法に関する注目が高く、見学者も多く、多数のマスメディアから取材を受けた。
天守閣の周辺には国の特別史跡、重要文化財などの施設があり、文化庁の指示を受けてそれらを傷つけないよう対策を施した。石垣も特別史跡であり、汚損しないよう全面養生を実施した。また、大阪城公園を訪れる観光客の安全確保を第一に、一部の作業を夜間に行った。
1997(平成9)年3月29日、最新技術を集めた大改修工事は無事故で竣工式を迎え、火縄銃による号砲を合図に始まった一般客の入館は長蛇の列となった。