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  • アトリウム

解説

巨大複合施設に生まれ変わった京都の表玄関

古都・京都の表玄関、JR京都駅ビルの改築工事は、平安遷都1200年記念事業の中でも最大のプロジェクトとして位置付けられていた。駅舎としての機能はもとより、ホテルや百貨店、立体駐車場や文化施設などが一体となった複合施設で、東西470m、高さ60mに及ぶ建物は駅舎としては国内最大規模である。

中央駅舎部のコンコース上空50mには、巨大なガラス屋根が広がり、大アトリウム空間を形成。このアトリウムの地上部から西側に向かって、171段の大階段が最上部の空中庭園まで続いている。ガラス屋根の下には東西を結ぶ空中径路が設けられ、アトリウム東側には「ホテルグランヴィア」と「京都劇場」、西側には「ジェイアール京都伊勢丹」と駐車場が設けられている。

工事にあたっては、京都駅を含めた諸施設の機能を損なうことなく作業を進めることが求められた。「鉄道利用客の円滑な流動の確保」「営業線近接工事や活線上空工事の列車に対する安全確保」「工事車両による交通渋滞、工事中の騒音・振動による近隣への影響」「工事短縮に関わる工法の検討」などを考慮し、きめ細かい施工計画を2年かけて立案した。その結果、実質工期約2年半で延23万㎡を超える大規模な施設を完成させることができた。

工事の山場の一つは、山陰線ホーム上に計画された駐車場と百貨店部分の鉄骨建て方工事。乗降客が行き来するホームの上で鉄骨工事を行うことはできず、ホームから離れた場所で鉄骨を組み、組み上がった鉄骨を深夜の時間帯にホーム上空に仮設したレールに乗せてスライドさせるスライド工法を採用。鉄骨の総重量は2,130t、これを3工区に分けて横引きした。

もう一つの山場は、中央駅舎部の大アトリウムの工事。全長150mのアトリウムの屋根を支える鉄骨トラス構築は移動ベント工法を採用。東西の両端から3ブロックに分け、各ブロックの鉄骨を仮設ステージの上で組み立て、仮設ステージを当該ブロックに移動させて鉄骨を設置、これをブロックごとに繰り返すもので、鉄骨総重量は1,250t、仮設ステージは地上25mの位置で仮受けさせた。

建物が東西に長大なため揚重機が多数必要となり、最盛期、12基のタワークレーンが稼働して鉄骨工事、PC版工事を行う様子は壮観であった。

非常に厳しい工期だったものの、延べ70万時間にも及ぶ夜間工事を経て、予定通り引き渡しを終え、1997年9月1日、生まれ変わった京都駅ビルはグランドオープンを迎えた。

BCS賞(1999年)、第11回電気設備学会賞(技術部門施設賞)を受賞した。

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