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解説

パンタドーム構法で造られた文化交流拠点

市制100周年の記念事業として計画された市民ホール「なら100年会館」は、JR奈良駅周辺に、新たな都市拠点の形成をめざす再開発事業「シルクロードタウン21」の基幹施設として位置づけられている。

南北に伸びる長楕円の平面およびクロソイド曲面に沿って内側に傾斜する幾何学的外殻構造は、コンクリート補強鋼鈑シェルで構成され、その表面は寺院の大屋根を思わせる瓦風還元タイルで覆われている。

特筆すべきは、躯体の構築方法として世界で6例目となるパンタドーム構法。電車のパンタグラフのようにくの字に折りたたんだ228枚の外壁パネルを楕円形の屋根部とともに地上で組み立て、64台のジャッキによって押し上げるものである。高所作業が減り、施工の安全性が高まるほか、屋根部の仕上げも地上で先に行うことで工期短縮が可能となる。バルセロナ・オリンピックの会場パラウ・サン・ジョルティの建設でも採用されているが、従来の屋根だけのジャッキアップに対して、本工事では屋根と同時に構造体となる外壁PCa版パネルも押し上げる点が世界初の試みとなった。4,700tの重量を6日間かけて13.4m押し上げる過程を一般にも公開し、奈良市民だけでなく海外を含め約3,000名の見学者を集めた。

1,720席の大ホールはあらゆるイベントに対応でき、448席の中ホールは全面ガラス張りで室内楽用、小ホールは多目的ホールとして地域イベントに活用されている。建物外部にはポプラの高木が植樹され、周囲はケンタッキーグリーングラスで覆われ、歩経路は奈良特産の燻し瓦で舗装されている。

天平文化が花咲いた古都に、伝統文化の雰囲気をまとった新しい国際的文化交流拠点が誕生した。

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