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  • 円形テラス

解説

神戸の震災復興の象徴となった日本最大級の免震美術館

兵庫県立美術館は、1970年に開館した兵庫県立近代美術館を発展的に継承するもので、震災からの神戸市復興計画の中核プロジェクトとして開発された神戸東部新都心(HAT神戸)に、文化復興のシンボルとして建設された。

1〜2階外壁は「震災前の阪神間」をイメージした割肌調御影石、3〜4階は「復興の未来」をイメージしたガラスカーテンウォールで、カーテンウォール越しにコンクリート化粧打放し壁が配置されている。施設全体が、隣接する水際公園やハーバーウォークなどの周辺環境と一体となった開かれた空間となっている。

延床面積27,461㎡の、西日本最大規模を誇るこの美術館の特徴は免震装置。積層ゴムアイソレーター190台、鋼棒ダンパー173台、鉛ダンパー76台からなる免震装置により、建物と収蔵品を阪神・淡路大震災級の地震から守ることができる構造となっており、美術館としてはもちろん、すべての免震構造建物の中でもトップクラスの規模である。

設計者である安藤忠雄氏のこだわりと妥協を許さない姿勢は圧倒的で、その勢いに応えるだけの準備と心構えが施工側に求められた。外壁の石決定までに約1年間の検討期間を要したほか、自然光を取り込んだ展示室のトップライトでは工場を借りてモックアップによる実験を実施。安藤作品ならではの打放しコンクリートの品質を上げるために、コンクリート打設は、JV職員も全員参加。その甲斐あって、外部にある円形テラスの出来映えに対し、安藤氏から、「世界に誇れる技術である」との評価を受けた。

「地域に開かれた現場づくり」を方針として掲げ、「仕事はやる気と熱意、苦労した現場は肌で感じる」をモットーに、平均年齢31歳という若い職員たちがアイデアを出し合って、さまざまな取り組みを行った。仮囲いに工事のイメージイラストを描き、一部を透明にして施工状況がわかるようにした。朝礼後には隣接する公園の清掃や夏場の散水を行い、散歩に訪れた地域住民とのコミュニケーションを図った。さらに設計のラフスケッチや模型、免震装置の概要などを展示した資料スペースは、国内外からの見学者に好評を得た。

2001年9月30日、引き渡しを完了。翌年4月6日に開館を迎え、一般公開が始まった。館内には、工事に携わったすべての人が記名した巻紙が収められている。

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