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解説

生駒山を貫き、大阪市と奈良市を最短で結ぶ自動車専用トンネル

第二阪奈有料道路は、生駒山を横断し、大阪側は阪神高速13号東大阪線および大阪外環状線、奈良側は阪奈道路と接続する延長13.4kmの自動車専用道路である。大阪都心部と奈良県北部地域を結ぶ阪奈道路と国道308号線の慢性的な交通渋滞の解決策として計画された。このうち、当社JVは生駒山の下を貫く阪奈トンネル(延長約5.6km)の大阪側の山岳トンネル工事(延長約4.9km)を施工した。

まず、国道308号線との交差を避け、市営若宮住宅区域内の市道直下に作業坑を掘削することとした。作業坑の吹付けコンクリートは、民家が近接密集していたことから地上にバッチャープラントを設けることができず、騒音防止のためトラックマウントによるSEC2系列吹付方式を採用。坑内で高品質な生コンクリートを製造し、昼夜施工を可能にした。

本坑掘削のうち土砂部は、低土かぶりの本格的な都市NATMによるトンネル施工であり、頂設導坑先進工法を採用してタイヤ方式による大型機械化施工を行い、工期短縮を図った。掘削はツインヘッダによる機械掘削で、上半部の切拡げ掘削、下半掘削、インバート掘削へと随時施工した。岩盤部の掘削は、地表部の民家に影響を及ぼす区間では当時国内最大級であった自由断面掘削機(ロードヘッダS-300)を採用し、それ以降の区間では発破による掘削とした。最盛期には本坑と並行して、換気坑、電気室、第一・第二集塵機室、避難連絡坑と、最大で5ヵ所の切羽で同時施工した。

工事中は、導坑内への流砂現象を止めるため帯水砂層部への薬液注入を行ったほか、トンネル直上を横断する近鉄奈良線付近から断層破砕帯を有する岩盤部までの区間については、当社技術AGF-OFPの基礎となる長尺先受工を実施した。これが地表面沈下防止対策として効果を上げ、あらゆる地山への対応を図るシステムの技術開発に貢献した。

当社は生駒山のトンネルについては3本の実績を有する。1911(明治44)年から1914(大正3)年、当社の社運を賭した当時の大型トンネルである「大阪電気軌道会社(現、近畿日本鉄道)生駒隧道」、車両の大型化に伴う1962(昭和37)年から1964年の「近鉄奈良線生駒トンネル」、地下鉄相互乗り入れとなる1982年から1986年の「近鉄けいはんな線生駒トンネル」の3本である。今回の4本目完成には、生駒の山を熟知した当社の経験と新しい技術が活かされている。

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