写真

解説

渇水に悩む福岡都市圏に安定した飲料水を供給する海水淡水化施設

福岡都市圏に安定した水道水を供給するため、海水淡水化施設の建設が計画され、当社JVが公募型技術提案評価方式によって設計・施工で受注した。本施設は、海水を取水する取水施設、海域から陸上まで海水を導水する導水管施設、海水を淡水化するプラント施設から構成されている。

取水方式として、当社が開発した浸透性取水方式を採用。取水施設は、玄界灘の沖合約640mの水深約11〜12mに設置した。施工については、集水枝管(30m/ユニット)を6〜12のユニットのブロックに分割し、集水枝管敷設からフィルター層形成までの作業を一連化することで集水枝管の安定および砕石層への砂の混入を防止した。砕石層の施工では、十分な精度を得るために、投入枠を使用した薄層散布方法を採用し、全旋回式起重機船にて数層に分けて投入した。

導水管は耐塩性に優れたレジンコンクリート管を使用し、高水圧下でも切羽の密閉性が高く、長距離施工に優れた泥水式推進工法を採用した。管路の途中に発進立坑を設け、陸側360mと海側820mに分割して掘進し、計4ヵ所の中押し設備を設置することで、不慮の推進力増大に対応可能なものとした。

プラント施設は、凝集剤無注入のUF膜(Ultrafiltration:限外ろ過膜)による膜ろ過方式で、まず海水の濁質成分を除去。海水から淡水を分離する逆浸透部は、高圧逆浸透膜、低圧逆浸透膜から構成される。高圧逆浸透膜は、淡水化率を60%まで向上させることが可能で、さらに低圧逆浸透膜を通すことで水質の向上を図っている。

土木、建築、エンジニアリングと多種多様な工種があり、安全管理には特に注意を払う必要があった。海上工事では、漁業組合との事前調整を行い、海洋汚濁防止には万全の対策を施した。

建物は軽量化と強度に重点を置いて地震に強い構造にするとともに、周辺環境との調和を考慮した外観デザインになっている。

施設は、海の中道奈多海水淡水化センターとして、2005年6月から供用を開始。福岡都市圏25万人分の生活用水に相当する1日最大5万㎥の真水を、海水から作り出している。

同センターは公募により、「まみずピア」(愛称)と命名された。

技術紹介へのリンク

地図