おおばや氏とぼく
「宇宙エレベーター」篇
とある複合施設でエレベーターを待っていた「おおばや氏」(佐藤健さん)。そこへ「こんにちは」とやって来た「ぼく」に、「お久しぶりです」と挨拶して、一緒にエレベーターへ乗り込みます。
ボタンの前に立ち、「何階ですか?」と尋ねる「おおばや氏」。「ぼく」が「5階を」と答えると、突然「宇宙にまいります」とつぶやきます。「は?」と戸惑う「ぼく」をよそに、「エレベーターで宇宙へ行けたら素敵ですよね」と「おおばや氏」。話についていけない「ぼく」が「なんの話?」と返すと、「おおばや氏」は力強く「未来の話です」と答えます。「ずいぶん先の話だな」と微笑む「ぼく」に、「案外、近いかもですよ」と見上げるように促すと、地球と宇宙空間の巨大なステーションをつなぐ宇宙エレベーターの構想図が浮かび上がります。
再び現実に戻り、「でしょ」と「ぼく」を見つめる「おおばや氏」。そこへ「おおばや氏(130歳?)」というタイトルが重なり、なんだかワクワクしている「ぼく」と「おおばや氏」のツーショットに、「彼の名前はおおばや氏。時々未来に連れてってくれる」というナレーションが入ります。
SPACE ELEVATOR
宇宙エレベーター建設構想
かつてある男が、エッフェル塔を見て考えました。「このまま塔を伸ばしていけば、いつか宇宙に届くのではないか」 のちに宇宙工学の父と呼ばれる科学者ツィオルコフスキーの、途方もないアイデア。いま大林組は、100年の時を越えて、その実現に挑んでいます。
なぜ宇宙エレベーター?
大林組の構想する宇宙エレベーターは、全長9万6000km。人間が宇宙へ行くならロケットがあれば済むところ、なぜこんな大がかりなものが研究されているのでしょうか?ポイントは、輸送費です。たとえば1kgのものを宇宙へ運ぶのにかかる費用は、ロケットが100万円以上。一方、宇宙エレベーターであれば、それが数万円で済むと言われています。まるで電車のように地上と宇宙を行き来しながら、多くのヒトやモノを宇宙へ届ける。巨大なステーションや、月面基地、火星基地。人類のさらなる宇宙進出の足がかりとして、宇宙エレベーターは大きな可能性を秘めています。
宇宙エレベーターの仕組み
宇宙エレベーターの基本的な仕組みはとてもシンプルです。宇宙と地上をケーブルでつなぎ、人が乗るカゴ(クライマー)が、そこを行き来する。問題は、どうやってケーブルをつなげるのか。地上から伸ばしていくと、途中で折れてしまうリスクがあります。そこで考案されたのが、ケーブルを搭載した宇宙船を打ち上げ、宇宙から地上に向けてケーブルを垂らしていく、というやり方。大林組の構想では、宇宙船からケーブルを垂らしつつ、宇宙船自体も上昇をつづけ、高度9万6000kmに到達。その後、ケーブルを補強したり、ケーブルの途中にステーションを建設したりしながら、約20年かけて全体を完成させていきます。完成したケーブルは地球のまわりを回転しているので、その回転するスピードを使って、宇宙船を月や惑星まで飛ばすことができます。
カギを握るカーボンナノチューブ
宇宙エレベーターの長年の課題、それは長さ数万kmのケーブルを吊り下げると、自分の重みで切れてしまうことでした。突破口を開いたのが、鋼鉄の20倍以上の引っ張り強度をもつ新素材、カーボンナノチューブの発見です。大林組は、カーボンナノチューブの研究を、静岡大学や有人宇宙システム株式会社と共同で進めています。2015年から2年間、国際宇宙ステーション(※1)の船外実験プラットフォーム(宇宙航空研究開発機構(JAXA)の実験装置を利用(※2))でカーボンナノチューブを、過酷な宇宙環境にさらす耐久実験を実施しました。2019年夏からは、2回目の宇宙実験を行っています。
※1 上空約400kmに浮かぶ宇宙実験施設で、アメリカ、ロシア、日本、カナダおよび欧州宇宙機関(ESA)の15ヵ国が協力して運用している
※2 JAXAの簡易曝露実験装置の利用テーマとして実施
早ければ2050年の完成を目指している宇宙エレベーター。地球から月までの距離が約38万km、宇宙エレベーターの全長はその4分の1にあたります。もっと宇宙が近づく未来、あらゆる人が宇宙に行ける未来に向けて、大林組の挑戦はつづきます。