地球と宇宙をつなぐタワー

宇宙エレベーター建設構想

構想:大林組プロジェクトチーム
監修:青木義男

半世紀にわたる宇宙開発の進展により、人類が宇宙へ進出する目的は多様化した。しかしその可能性をさらに広げていくためには、人や物資の経済的かつ大量の搬送が不可欠だ。地球と宇宙の間をケーブルでつなぎ、電車で行くように気軽に宇宙への行き来が可能な「宇宙エレベーター」は、ロケットに比べ、運搬効率が良く、経済的で、環境への影響が少ない輸送手段として期待されている。

地球上に構築する限り、建設物は自重によって壊れる限界点があるが、宇宙へと伸びるタワー「宇宙エレベーター」は、理論的には実現可能とされていたものの、地球と宇宙を結ぶケーブルに必要な「軽さ」と「強度」のある素材が存在せず、夢物語にすぎなかった。しかし1991年に、軽くて強い素材カーボンナノチューブが発見され、宇宙エレベーター実現の可能性が高くなった。

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宇宙エレベーターの仕組み

地球を周る人工衛星は、地球の重力に引っぱられても落ちない速度で周っているため、高さを維持し続けている。赤道の上空約36,000kmにある人工衛星は、地球の自転と同じ速度で周っていて、地球からは同じ位置に静止しているように見えることから、「静止衛星」と呼ばれている。この静止衛星から、バランスをとりながら地球側と宇宙側にケーブルを延ばし、人や物資を輸送できるようにしたものが、宇宙エレベーターだ。

全体構成

全体構成図

宇宙エレベーターの全長は96,000km。地球上の発着点がアース・ポート、静止軌道上には、最大規模の駅、静止軌道ステーションがある。これらメイン施設のほかにも、高さの特性を活かした施設をつくることができる。火星や月と同じ重力になる火星重力センター、月重力センターでは、それぞれの重力環境を利用した実験や研究を行う。低軌道衛星投入ゲートでは、地球から運んだ人工衛星を高度300kmの低軌道に投入する。静止軌道ステーションは大規模な宇宙太陽光発電システムを設置し、静止軌道を周回する静止衛星の投下入も可能だ。静止軌道より宇宙側には、太陽系の惑星探査や資源採掘のための施設を建設。一定の高さから宇宙船を放出すると、周回速度を利用して地球の重力圏から脱出させ、地球からよりもはるかに容易にほかの惑星の軌道に入れることができる。

宇宙エレベーターの建設方法

  1. 1.工事に必要な材料を数回に分けてロケットで打ち上げ、低軌道上で建設用宇宙船を組み立てる。
  2. 2.建設用宇宙船は、電気推進を利用して地球を周回しながら上昇し、静止軌道に到達して地球の自転と同じ速度で周りはじめる。
  3. 3.建設用宇宙船が所定の位置に到達すると、先端にスラスターを取り付けたケーブルを繰り出しながら上昇。ロケット打ち上げから約8ヵ月でケーブルは地表に到達し、高度96,000kmまで上昇した宇宙船はカウンターウエイトになる。
  4. 4.工事用のクライマーが、補強ケーブルを貼りつけながら上昇し、最上部でカウンターウエイトになる。約500回の補強を行いケーブルが完成すると、重さ100tのクライマーが使えるようになる。
  5. 5.完成したケーブルを使って静止軌道まで部材を運搬し、静止軌道ステーションを組み立てる。
  6. 6.その後、各施設を並行して建設する。

アース・ポート

アース・ポート外観

地球上の宇宙への発着場となるアース・ポートは、赤道上に、陸上と海上に分けて建設する。陸上部分は、宇宙エレベーターの監視施設のほか、世界から人や物資が集まる広大な空港やホテル、宇宙開発に関係する企業の研究所や工場などが集まった街になる。海中トンネルで結んだ海上部分には、クライマー発着場、出発・到着ロビー、管理施設のほか、格納庫、修理工場、倉庫、研究開発センターなど、アース・ポートの要(かなめ)となる施設が建設される。

直径約400mの海上施設は、最下部に造られた中空のコンクリートの浮力で、海に浮かんでいる。宇宙へと延びるケーブルを固定している部分では、海水を利用したバラスト調整システムによって、ケーブルにかかるテンションを制御している。

静止軌道ステーション

静止軌道ステーション外観

静止軌道ステーションでは、大規模な宇宙太陽光発電や宇宙環境を活かした研究開発などを行なうほか、地球からの観光地としても利用される。静止軌道ステーションは、ユニットを組み合わせた縦に長い形をしている。同じ形の基本ユニットを使うことで、輸送や組立てを単純化。拡張することや、故障した際に取り換えることも容易だ。

輸送の際には、3つのユニットを連結し、クライマーで牽引。金属パネルと膜のハイブリッド構造のユニットは、輸送時は三角柱の形をしているが、静止軌道上で、圧縮空気を入れ、体積が6倍の六角柱の形に膨らませて使用する。

工期について

宇宙エレベーターの実現のために克服しなければならない問題は沢山ある。これらの問題が解決され、カーボンナノチューブ製のケーブルやクライマーの開発が終了し、2025年にアース・ポートの着工ができれば、25年間の建設工期で、2050年から静止軌道ステーションの供用が開始できる、と考えている。

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この記事が掲載されている冊子

No.53「タワー」

タワーはすごい。見上げていると自然と元気になり、上に上がって外の景色を目にすると思わず笑みがこぼれる。2009年に着工し2012年に竣工した東京スカイツリーⓇの建設は、私たちにタワーのもつ潜在力を見直させてくれた。
人はなぜ高みを目指すのか。タワーにはどのような力があるのか。本号では、OBAYASHI IDEAとして宇宙へ届くタワー「宇宙エレベーター」建設構想を発表するとともに、あらゆる角度から塔の意味を再考する。
(2013年発行)

グラビア・ウルトラ・タワー

選・文 五十嵐太郎(東北大学教授、建築史・建築批評家)

塔と人間 エッフェルからの眺め

樺山紘一(東京大学名誉教授、印刷博物館館長)

バベルの塔 コミュニケーションの神話

中沢新一(人類学者、明治大学野生の科学研究所所長)

塔の「ニッポン」

橋爪紳也(大阪府立大学 21世紀科学研究機構教授・観光産業戦略研究所所長)

宇宙エレベーター 人類最大の建造物

青木義男(日本大学理工学部教授、芸術学部兼任講師、宇宙エレベーター協会副会長)

OBAYASHI IDEA

地球と宇宙をつなぐ10万kmのタワー 「宇宙エレベーター」建設構想

構想:大林組プロジェクトチーム
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2050年宇宙エレベーターの旅

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シリーズ 藤森照信の 『建築の原点』 (5) 大湯環状列石

藤森照信(東京大学名誉教授、東京都江戸東京博物館館長、建築史家・建築家)

「塔」をめぐる考察と表現31