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  • 前期離波宮の遺構(大阪歴史博物館)

解説

大阪の過去と未来を結ぶ情報文化のランドマーク

大阪上町台地の大阪市立中央体育館跡地に建つNHK大阪放送会館・大阪歴史博物館は、大阪市の「難波宮跡と大阪城公園の連続一体化構想」の一環であり、NHKと大阪市による共同プロジェクトとして建設された。建物は、放送施設と博物館という異なった機能を一体化させた大型複合施設である。

NHK大阪放送会館は、敷地向かいの大阪市中央区馬場町からの移転、大阪歴史博物館は大阪城公園内にあった大阪市立博物館の移転と新たに考古資料センターの構想を統合して計画されたものである。

外観は、水の都大阪を象徴し、博物館が船、放送会館が帆をイメージしたもので、放送会館と博物館の間には球形の巨大アトリウムが共有スペースとして設けられている。

施工では、放送会館1〜6階部分に1,417席のホールが設けられ、地下に難波宮の遺構を保存することなどから、7階以上の高層階に荷重を両端コア部で負担させるべく、メガフレームという鉄骨大架構を用いている。通常の施工方法では高層部工事はホール部分の工事終了後の施工となるうえ、巨大な仮設ステージが必要となるため、工期、安全性、コストを考慮してリフトアップ工法を採用、7・8階フロア部分の鉄骨を地上で組み立てたうえで、2基のタワークレーンとともに、総重量3,000tの揚体を油圧ジャッキで約30mリフトアップした。

地下部分では、難波宮遺構の下部全体に鋼管を圧入してその荷重を支えるパイプルーフ工法で施工し、遺構に影響を与えることなく工事を進めた。完成後来館者はガラス張りの床越しに遺構の一部を観察できるようになっている。このほか、地震時の制振対策として、放送会館にはY形ブレースダンパーおよびオイルダンパー、博物館には粘性体制振壁が採用されている。

2001年4月、延労働時間が600万時間という巨大で複雑な工事は、無災害で完成し、最新設備を持つメディア施設と大阪の歴史を紐解く博物館――過去と未来を結ぶ情報文化のシンボルが誕生した。

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