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解説

創立70周年記念事業の講堂を14ヵ月で完成

御手洗毅記念館は、キヤノンの創立70周年記念事業の最後を飾るプロジェクトとして下丸子本社敷地内に計画された多目的ホールである。当社は、同工事を設計・施工で受注、14ヵ月という超短工期で完成させた。

講堂は、さまざまな利用形態に対応する客席収納昇降床を備え、段床から平床への転換および分割が可能となっている。さらに舞台・照明・空調、映像・音響設備なども統合的に可変とすることで、用途ごとに最適なホール環境を実現している。

外装はアルミとガラスを主体とし、敷地内の既存建物との調和を図りながら、木質系素材のホール内装をガラス越しに表出させている。コンピュータ制御された可動式ルーバー内蔵のダブルスキンガラススクリーンを採用し、熱負荷軽減と日射対策を図るとともに、ファサードに変化を持たせ、「光の制御」という発注者の歴史とイメージを具現化し、記念館としてのデザインの独自性を表現している。

14ヵ月という超短工期を実現するために、ホールの屋根と天井の施工にはリフトアップ工法を採用した。外周部の鉄骨を組み立て、次にホール部の屋根トラス鉄骨を地上で組み立て、外周部鉄骨上部に設置したジャッキで高さ16mまで3回に分けてリフトアップした。段階的にリフトアップを行うことで、ホール特有の天井内設備を効率良く取り付けることも可能となった。38.4×57.4×高さ5.27m、重量1,200tを超える巨大な構造物を64台のジャッキで荷重を分散させながら吊り上げていくため、当社が開発した監視システムを導入し、上昇させる高さ、荷重はもちろん、鉄骨のひずみや傾斜なども計測しながらの作業を行った。天井内の各種設備工事の先行着手、仮設支柱の軽減、高所作業の軽減によって、在来工法よりも約4ヵ月の工期短縮と、災害リスクの低減につながった。

日本を代表するものづくり企業である発注者の期待に応え、工期内に完成させることができた。

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