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解説

綿密な対策と新工法の採用で困難なトンネル工事を予定通り実現

島田第一トンネルは、新東名高速道路のうち、静岡県藤枝市から島田市の山岳部を東西に結ぶ片側3車線の大断面トンネルである。トンネル掘削断面積は180〜210㎡で、供用中の東名高速道路に比べると、約2倍となっている。本工事は、新東名高速道路の工事としては最後に発注された長大トンネル工事で、供用開始に向けて工程を厳守することが求められた。

主な地質は新第三紀砂岩・泥岩互層の付加体で、潜在的な亀裂を多数有し、亀裂面は鏡肌を呈するなど、概して脆弱な地山が広範囲に分布していた。他社JVが施工していた下り線トンネルでは、TBM(トンネル・ボーリング・マシーン)機体拘束による掘進停止、切羽崩落、変位増大などにより掘削は難航し、上り線トンネルでも同様の問題が発生すると予想された。そこで、発破掘削による上半先進NATM工法を採用し、トンネルの両坑口から同時に施工を開始した。

掘削を開始したところ、上り線掘削の影響によって下り線トンネルに変状が発生していることがわかり、上り線掘削の影響による地山の緩みを抑制するために、支保パターン増強のほか、さまざまな補助工法(段付き鋼管による脚部補強工、長尺先受工法(AGF)長尺GFRP管鏡ボルト工法(FIT80S)など)で対処した。着工当初から発注者、当社JV、本社トンネル技術部などにより、対策の検討協議を行っていたため、迅速に対応することができた。

掘削はトンネル断面を上下方向に3分割して、上半・下半・インバートの順に施工したが、新東名高速道路のほかのトンネル工事では採用していない大型インバート桟橋を導入し、トンネル断面の早期閉合と工程確保を図った。

2009年9月30日、上半が貫通。工事開始以来6年余を経て、2011年8月22日に無事竣工を迎えた。

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