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解説

湧水、ガス、土圧、土砂流出に屈せず、日本で4番目の長大鉄道トンネルを掘り進む

北陸新幹線飯山トンネルは、長野県飯山市から新潟県上越市に至る、延長22.251kmの、鉄道トンネルとしては日本で4番目の長大トンネルである。当社JVでは、新潟県側出口部にあたる板倉工区(3,660m)の施工を担当した。

大きな膨張性土圧により工事が難航した「ほくほく線鍋立山トンネル」に近接し、地質も類似の新第三紀泥岩層をはじめ第四紀の砂礫層などから構成されていることから、当社JV担当工区を含めた6工区のすべてで、膨張性地山や多量湧水などに見舞われた。こうした問題は事前に予想されたので、本社技術部などを含めた技術検討会を幾度も開催。万全の施工体制で工事に着手した。

斜坑掘削時から漸増した大量の湧水の発生に対しては、濁水処理設備を240t/hに増設したほか、直径1.2mの排水立坑を斜坑底に設置した。この影響で近隣の井戸では渇水被害が発生したが、当工区でディープウェルを10基設置し、渇水井戸への水供給と地下水位の低下を図った。掘削再開後、泥岩層に入った地点で予想通りメタンガスが発生したが、換気量を3,000㎥/minに増量し、検知装置を設置するなど監視体制の強化を実施した。

隣接工区境より500m手前の擾乱帯に入った地点から、鋼製支保工の座屈・破断、吹付けコンクリートの破壊・剥離の現象が顕著になり、支保工の沈下が最大で90cm、壁面の押出しが最大で70cmにも達した。この超膨張性土圧に対しては、長尺先受工法(AGF)長尺GFRP管鏡ボルト工法(FIT80S)などの補助工法の採用、高規格支保工および高強度吹付けコンクリートの使用、多重支保工法(断面を大きく掘削し、土圧で一次支保工が変位縮小した後に、新たに2重、3重の支保工を設置する)の採用により、早期断面閉合による掘削断面の安定を確保した。この超膨張性土圧地帯の掘削は日進1mであった。

また、2004年と2006年の2度にわたり土砂流出が発生。1回目には、流出土砂を薬液注入で固めて撤去、切羽に注入用バルクヘッドを築造した。2回目には、地上に発生したクレーター状の陥没穴を充填し、陥没穴周辺の地山をセメント系材料を注入して固めた。この時点で未掘削区間は32mであったが、この部分の地盤改良を懸濁型から溶液タイプの注入材料に変更することにした。そのうえで注入効果を確認しながら、中央導坑を先進し、慎重に掘り進めた。

そして2007年12月3日、運輸機構関係者、JV社員、協力会社作業員が見守る中で、無事貫通に成功した。

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