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  • 用地造成工事
  • 岬町多奈川地区土取
  • 1期アンダーパス

解説

アジアのハブ空港をめざして、国内初の完全24時間運用可能な国際拠点空港
用地造成工事

関西国際空港の2期工事は、1期空港島の沖合いを埋め立てて空港島を造成し、4,000mのB滑走路、エプロン、ターミナルビル、貨物取扱施設のほか、各種航空保安施設を整備するものであった。当社は地盤改良工事、空港島埋立工事、造成工事などを他社と共同で施工した。

工事海域の水深は18〜20m、海底には厚さ20〜29mの軟弱な沖積粘土層、その下には400m以上の洪積層が堆積しており、1期工事よりも厳しい施工条件となっていた。予想される地盤沈下は、2期では約18mとなっており、地盤の安定を確保しながら高精度な地盤改良が要求された。

埋立工事では、水深6〜7mまで造成が完了した埋立地盤上に土砂の直接投入や揚土を行い、海面から10mの高さまでの埋立作業を行った。担当工区は、2つの空港島を結ぶ誘導路、誘導路を横断するアンダーパス、重要な空港施設やエプロンが建設される区域であり、将来の不同沈下の抑制を図る確実な施工と綿密な管理が要求された。揚土作業では、狭い範囲に急速に載荷することが最大の特徴となる。そのため沈下板や磁気伝送水圧式沈下計などによる定期的な沈下計測やチェックボーリングでの改良地盤の強度確認と沈下安定管理に加え、ナローマルチビーム方式の深浅測量システムによって海底地形を面的に把握し、円弧滑りや側方変位などの地盤破壊が生じていないかの確認を行った。これらにより、埋立工事は、一次揚土地盤の「均一で一様」という品質を満たしたうえで、揚土(その4)工事はほぼ予定工期通り完了させることができた。

造成工事では、主に滑走路や誘導路の舗装帯直下部を施工した。大量急速施工に対応するため、GPSなどの情報処理技術を活用した施工管理システムを導入した。転圧管理にはαシステムを用いて、施工管理の合理化、管理精度の向上を図った。

土砂採取工事

埋立用土砂の採取地の一つとして選ばれた大阪府岬町の丘陵地では、当社JVが約7,000万㎥にも及ぶ土砂採取および供給工事を担当した。地山岩の発破爆砕・集土・積込・ダンプ運搬・投入、クラッシャー破砕・コンベア運搬・一時貯留・船積みに至る連続土工システムを構築。採取された土砂は地下トンネル内をコンベアで運ばれ、海岸に設けられた桟橋から土運船に積み込まれる。桟橋の構築では、ノルウェーのアーケル社と技術提携したスカート・サクション基礎を海洋構造物として実用化した桟橋先端防衝工、工場製作骨組を海上運搬して設置した鋼製ジャケット桟橋が特筆すべき事項として挙げられる。

周辺海域は好漁場で、河川沿いには民家や田畑が点在し、アユやホタルが生息する自然豊かな環境であるため、濁水の浄化を行い粉塵防止用の散水に利用した。発破を用いて岩を砕く作業についても、近隣への騒音や振動を軽減するため、火薬量を制限し、点火回数を分けることで対応した。5,000tを超える爆薬を使用したが、飛び石の事故や地元からのクレームは発生しなかった。土砂の粉砕・運搬には、国内の工事ではなかなか見ることができない超大型の重機を多数使用。「まるで家が動いているよう」とまで言われた超大型ブルドーザに、バックホウ、ショベル、ダンプ、クローラドリルなど、世界最大級の設備が活躍した。造成後の生態系を維持するために、法面には竹筒芽苗工法による植樹を行い、山林と造成区画との境界部には伐採材の枝葉と根を積み上げる林縁保護工法で、乾燥を抑えている。

1期アンダーパス築造工事

2期空港島の造成完了に伴い、上物工事がスタートし、当社JVはアンダーパスの築造工事を担当した。施工場所は、1期空港島南部への主要幹線道路とも平面交差しており、複雑な道路の切り回しが必要とされた。さらに埋立時期に15年の差がある新旧の空港島の境界に位置しているために、不同沈下への対応も課題であった。

上床版は工場製作のPC桁を並べる方法を採用。設計荷重約680tのエアバスA380が通過することを想定して、国内ではそれまで製作実績のない、1本約17tものプレキャストPC桁が用いられた。PC桁の総数は約660本にもなり、国内の大手メーカー5社に分割発注した。

冬には紀淡海峡から寒波が吹き付け、夏には逃げ込む日陰さえない酷暑という環境の中、事務所で寝泊まりしながらの作業が続けられた。そして2007年8月、B滑走路の供用が始まり、関西国際空港はアジアのハブ空港として、本格的に歩み始めた。

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