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#02 KOICHI IGUCHI

INTERVIEW #02 KOICHI IGUCHI
Film Director

Q:今回のCMをつくる上での狙いやポイントについて伺えればと思います。まずは原始人についてお聞かせいただけますか?

A:あれはホモ・ハビリスという、数百万年前を生きていた初期の原始人です。国立科学博物館名誉研究員の馬場悠男さんに監修いただきながら、可能なかぎり正確なCGモデルを起こしています。その上で演出としては「見た目は猿、動きは人間」ということを意識しました。人の祖先とはいえ見た目はほぼ猿なので、動きまで猿にすると完全に猿になっちゃうんです。ちょっと情けない感じとか、動きがもたついてどんくさかったり、表情が可愛かったり。そういう人間くささを狙っています。

Q:佐藤健さんに肩をポンとされて振り返るシーンが印象的でした。

A:あれも野生動物だったらひっかからないと思うんです(笑)。人間のものづくりは火を手に入れるまで始まらなかったけど、人間らしい心はその前から始まってたんじゃないか。心はもう人間だったんじゃないか。そんなことを考えていました。

Q:続いて佐藤健さん演じる現代人の役についてお聞かせください。

A:佐藤さんの役は、リアルじゃない神的な何かです。その「時代を超えた存在感」は、舞台の世界観に無理に合わせる必要はなくて、佐藤さんが当たり前にそこにいれば成立すると考えました。かといってリアルな生活感が出てしまってもだめなので、たとえば全身白の衣装というのも、そういう浮世離れした、ちょっと変わった印象を狙っています。

Q:演技の部分で佐藤さんにお伝えしたことはありますか?

A:彼は人類文明の鍵を握っているわけですが、あえて重要な人物に見えすぎないようにしています。火を渡すのもどこか遊び半分で、その先にあるものに責任は負わない、そんなイメージで演じてもらいました。人の祖先は数百万年の平和な時代が続いて、それが今の人類になって20万年で世界は激変しちゃったんですね。実は今回のCMの裏テーマでもあるんですが、結末がどうなるかは誰にもわからない、今やってることがどういう意味を持つのかもわからないけど、それでもとりあえずやる。そういう姿勢が彼の背景にあります。

Q:舞台は数百万年前の世界という設定ですが、制作のポイントをお聞かせください。

A:火を使い始めた人類の祖先がいたのは、アフリカの辺りといわれています。なので目指したビジュアルのイメージは、アフリカの砂漠や草原、そういう場所ですね。冒頭で燃えている木や、ラストで佐藤さんが腰かけている木も、アフリカに生えていそうな灌木をイメージしながら、流木を組み立ててつくりました。

Q:CMの音楽は、このためにつくられたオリジナル楽曲だそうですね。

A:静かなところから何かがふつふつと湧き上がってくる、そんなイメージでつくってもらいました。Layupというアメリカのアーティストです。お願いするにあたって、僕のほうでたとえばの歌詞を書きました。佐藤さんの演技の話にも通じるのですが、人類は未来に向かっている、とにかく時代は進んでいる中で、僕らは進んでいかなきゃいけない、なんだかわからなくても行かなければいけない。そんな内容です。

Q:最後に、監督の考える「つくるを拓く」について、今後つくり手として拓いていきたい新しい挑戦や目標があれば教えていただけますか?

A:映像の現場ってそれぞれのスペシャリストが集まった大所帯でつくるんですが、今YouTuberとかインターネットの世界を中心に、お金をかけずに良いものがどんどん撮れるようになっています。そんな中で自分も何かできないかなと考えて、カメラも照明もぜんぶ自分でやる「一人でできちゃうパック」を構想しています。「こんなにちっちゃいセットで、こんなに面白いことができる」といった、予算の制約をセンスで切り抜けることをやってみたいなと。たとえばローアングルのドリー映像ってちゃんと撮ろうとすると大変なんですが、それを僕が電動スケボーに乗ってスマートフォンのカメラで撮っちゃうとか(笑)。ハイエンドなCGやレンズを使う仕事とは別に、日常でみんなが楽しむ映像はそういうつくり方もあっていいのかなと思っています。

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