Q:まずは自己紹介をお願いできますでしょうか?
A:いま私は、大林組ビジネスイノベーション推進室(BI室)で、農業の事業化検証を行っています。BI室に所属する前から、千葉県でミニトマト栽培の事業に携わり、大林組の既存技術を応用した生産性向上の技術を開発していました。現在はインドネシアにある植物工場で、亜熱帯地域では栽培が難しいトマトなどの果菜類の栽培技術を確立し、事業化に向けた検証を行っています。
Q:あらためて大林組の「COMPACT AGRICULTURE」について簡単にお聞かせいただけますか?
A:農業がもともと持っていた物質の循環機能を人工的に再現する、究極の地産地消という構想です。ひとつの建物の中に、全自動の食糧生産工場と、人間の生活エリアを共存させて、農作物の栽培に必要なあらゆる物質を循環させます。たとえば植物の三大栄養素である窒素・リン・カリウムは、下水処理から取り出され、また人間の吐いた息に含まれるCO2も、回収されて再利用されます。
Q:「COMPACT AGRICULTURE」の背景にある、「循環」の考え方についてお聞かせいただけますか?
A:いま食の世界で起きていることは、生産地から消費地へはものが動くけれど、消費地から生産地へはものが動かない、という現象です。かつては畑に種をまいて、育ったものを人間が食べて、その排泄物を肥料として土地に戻す、というサイクルがありました。現在は、たとえば東北でつくったお米が関東で消費されると、お米の栄養分は一部が人間のからだに吸収され、残りが排泄物として出ていきます。それは関東の下水処理場で、微生物の力で分解され海に流されますが、分解したからといって消えてなくなるわけではありません。養分は微生物の体内に残り、そして微生物はどんどん増えていくので、最終的に微生物を集めて下水処理場で燃やしています。こうした消費する一方という状況は、やはり課題だと思います。