Q:この構想は未来にどんな変化をもたらすとお考えですか?
A:建設業は常に重力との戦いなんですよね。だから大きいものをつくるのは難しい。海上は工事も難しく、それが顕著です。軽ければ空から運んで設置も可能なので、海上の大きな建築、それが叶う可能性があるという意味で、建設業界の概念を広げて街づくりができると思っています。また、空調やディスプレイなどもナノマシン化すれば壁に埋め込めるので、デザインや建設工程自体もシンプルにできるんです。これまでばらばらの場所でばらばらにつくったものを現場で組み合わせていたものは、スーパークリーンルームをもつ工場でつくることになります。建設業というと3K(きつい・汚い・危険)なんて言われた時代もありましたが、ほとんどの材料が工場で安全かつ清潔につくられることになります。現場ではつなげるだけで工程も少なくなりますから、騒音問題の解決にもつながりますね。
Q:ナノテクノロジーは、建築のほかにどんな分野に役立っていくとお考えですか?
A:さまざまなものが小さく軽くなりますから、移動する際の持ち物が一気に減り、身軽になりますよね。もちろん、衣服のように残るものはあるのでしょうが、進化する振り幅はあるのではないでしょうか。小さくて軽いと例えば宇宙に行くうえでも特に便利そうです。ナノマシンは既に医療の世界で使われて、体内での患部を狙い撃ちした薬の投与などは実用されていると聞いています。
Q:他分野での技術革新によって建築も変化していくのでしょうか?
A:ナノレベルは水の分子より小さな世界。建築で扱っている世界とは規模が違いすぎて、ナノテクノロジーの建築への応用を考え始めた際には、社内でもナノレベルのものにまで注目する必要があるのかという声はありました。しかし、瓶の飲み物がペットボトルに変わったときのように、ものが軽く小さくなると生活そのものまで変わるんです。建築関係だとセンサーが分かりやすいですね。ナノサイズのセンサーならあらゆるところに埋め込められるので、温度や湿度が細かく自動調整できますし、VRやアバターも活用して別々の場所にいる人たちが同じ空間に一緒にいるような感覚を得るのも可能になるでしょう。また、そういったセンサーは自家発電が可能ですからエネルギーの分野にも変化をもたらします。そんな新たな未来を提示していくことで、大林組だけではなく社会全体で目指し、挑戦するキッカケにしてほしい。そんな思いからあらゆる未来構想を発信しているんです。
天井照明:パーソナル照度特性を考慮した空間全体照度の最適化
床:輻射パネルによるパーソナル温度制御
音環境:利用目的に合わせたスポット残響制御