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OBAYASHI INTERVIEW #01 YOJI ISHIKAWA Engineer

OBAYASHI INTERVIEW
#01 YOJI ISHIKAWA Engineer

Q:近年、大林組はさまざまな宇宙開発に取り組んでいますが、どのような目的で行っているのですか?

A:目的は主に3つあって、まずは、建設会社の技術が活かせる宇宙関連領域の研究開発を未来に向けて行うことです。同時に、宇宙関連領域の研究開発で得たものを地球上での建設業の研究開発に活かすことも目指します。2つ目は、宇宙関連で事業性が見込まれる分野に出資などを通して参加し、大林組の事業・業態を拡大すること。そして3つ目は、そのための人材育成・人材交流・人材採用に力を注ぐことです。

Q:具体的な取り組みは?

A:テーマは大きく分けて「宇宙に行く」「宇宙に住む」「宇宙を使う」です。「宇宙に行く」は、地上と宇宙を結ぶ宇宙エレベーターやロケットを打ち上げるための射場の建設など。「宇宙に住む」は月や火星に人が暮らす環境をつくるための、構造物の建築や宇宙農業の実現など。最後の「宇宙を使う」は衛星データを活用し、地盤状況の変化や集中豪雨などの状況を把握して、都市開発や災害対策などに結びつけるというものです。

Q:ものすごく広範にわたっていますね。それだけの活動をどのような体制で進めているのですか?

A:私が所属しているのは技術本部の未来技術創造部という、建設会社の枠にとらわれない未来的な技術の開発や事業への展開を進めているセクションです。宇宙に関する複数のプロジェクトが動いており、私はプロジェクト全体を管理しています。複数のテーマ別のワーキンググループそれぞれに、5~10名のメンバーが研究を行っています。グループは技術研究所、原子力本部、設計本部ほか多様なセクションの人材で構成されています。その一方で、宇宙に興味のある社員なら誰でも参加できる「宇宙開発協議会」というものもあり、分野の異なる幅広い世代の人たちがたくさん関わっています。それぞれ発想もまったく違うし面白いですよ。全体的に元気の良い人が多いです。

Q:つまり普段は宇宙と無関係の仕事をしている人たちが、いろいろな視点で意見を出し合っているということですね。石川さん自身の宇宙との関わりは、どのようなことから始まったのですか?

A:私は子どもの頃に1960~70年代のアポロ計画をリアルタイムで見ていた世代で、宇宙に憧れ、大学と大学院では航空学を専攻しました。と言っても、研究対象は「宇宙と生命」で、生命がどういうふうに地球で生まれたのか、そして宇宙で生まれた可能性はあるのか、ある意味、「過去の宇宙と生命の関係」を探る研究領域です。日本にはその研究を行っている大学や研究機関がほとんどなかったので、結局、渡米して大学やNASA(アメリカ航空宇宙局)の客員研究員になりました。

Q:それなのに、なぜ建設会社に入社したのですか?

A:バブル経済期の1990年頃、日本の建設会社は次々と宇宙開発のセクションを立ち上げました。当時、月や火星に人類が住むという話が世界的に盛り上がっていたのです。それは「現在の宇宙と生命の関係」にほかならず、建設業で宇宙に関わっていけば少しは人の役にも立つかと思って大林組に入社しました。いつまでもかすみを食べているような研究ばかりやってられませんしね(笑)。

Q:根っからの「宇宙分野のスペシャリスト」なのですね。でも、未知の部分が多い宇宙向けの技術開発は特別な難しさや苦労もあるのでは?

A:確かに地球では想定していなかった事態はよく起こります。例えば、宇宙エレベーターのケーブルへの採用を検討しているカーボンナノチューブという素材があります。その耐久性を検証するために、2015年から2017年にわたり国際宇宙ステーション/「きぼう」日本実験棟で曝露実験(宇宙空間に剥き出しでさらし影響を調査)を行いました。地球に帰還したカーボンナノチューブを解析したら、表面がガサガサになっているんですね。ケーブルは宇宙エレベーターの要だから「これはまずい」とかなり焦りました。原因を突き止めたところ、国際宇宙ステーションの軌道の周辺では、酸素が原子状になってそれが悪さをしていることがわかりました。そこで特殊なコーティングを施して宇宙へ運び、再び曝露実験を行っています。その解析結果がもうすぐ出るのでドキドキしているところです(笑)。

Q:宇宙空間を体験した人はごくわずかしかいないし、イマジネーションも必要になりますね。

A:確かにその通りです。大学院生の頃、「星間雲」という星と星の間にあって生命の素になるような物資の研究をしていましたが、実験中は宇宙にいるような気分になりました。火星の研究にのめり込むと、実際にそこに住んでいる錯覚に陥ったりもします。宇宙にいる自分から、地球にいる自分を相対視することができる。それも宇宙に関わる面白さですね。

Q:最後に「つくるを拓く」について、新しい挑戦や目標があれば教えてください。

A:これからは「未来の宇宙と生命の関係」という切り口で、人類が月や火星に行ってそこに住むことを突き詰めていきたいです。いずれ火星を宇宙服なしで歩き回れるような世界がつくれるといいなという夢みたいなビジョンを心に描いています。もちろん、その実現はたやすくなく、つまずいたり悩んだりすることは多いでしょう。でも、人の悩みなど宇宙の広さに比べたらあまりにもちっぽけです。だから私はいつも「笑顔を絶やさない」ことを大切にして、宇宙からの視点で大らかに物事をとらえるようにしています。そんな考え方をたくさんの人々と共有できればいいなと思いながら、宇宙関連の仕事を進めています。

つくるを拓く人#1 石川洋二 「宇宙開発」
(大林組コーポレートサイト)

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