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OBAYASHI INTERVIEW #04 NAOKO SAKATA Architect

OBAYASHI INTERVIEW
#04 NAOKO SAKATA Architect

Q:近年、大林組は木造建築に積極的に取り組んでいますが、その理由は何ですか?

A:もともと、木造建築に取り組む素地は社内の至るところにあったと思います。伝統建築を扱う人や耐火木材の開発に取り組む人、木工技術を磨くグループ会社など地道に挑戦を続けてきました。

Q:その後、木造に大きくかじを切るまでには何かきっかけがあったのでしょうか?

A:国内の山で育った木を使わなくなったことが社会問題となり、2010年に新しく法律が施行されました。公共の建築を積極的に木造でつくっていこう、というものですね。それから大型の木造建築に取り組もうという動きが社内でも大きくなりました。地道に挑戦して積み上げてきた土台が、一気に活かされ始めたと思います。法律の施行は、社会からの要請あってのもの。木造建築自体が、社会から必要とされ始めたタイミングでもあったと思います。

Q:坂田さんご自身はどのように木造建築と出合われたのでしょうか?

A:私は建築設計の出身で、集合住宅や工場、教育施設など大型の建築を幅広く担当してきました。そんな中で前述の通り法律が変わったことをきっかけに、新しい木造建築の技術開発を行うチームが立ち上り、私もメンバーとして参画して木造に取り組むことになりました。当時は社内で大型木造に取り組んでいる建築設計者はおらず、それから10年余り携わっています。その中で生まれた理想型が、CMのテーマにもなった「LOOP50」です。

Q:「LOOP50」について簡単に教えてください。

A:森の近くに森林を基盤とした街をつくります。森の持続性のために、森が成長した分だけ使い、使った分だけまた植えて育てる。さらには街で使うエネルギーも廃材や端材を燃料にしてまかなう。そんな循環をつくることで森林と共生することをめざす街です。

Q:どういった考え方から生まれたのでしょうか?

A:実はもともと、大型の木造建築をつくることが目的ではありませんでした。森と人が共に住み、人の営みに必要なエネルギーを巡らせることができる未来。そのために建築のかたちだけを提示するのではなく、そこで暮らしを営むための仕組みまでつくれないかと考えたんです。木は50年くらいで、建材として使える大きさに成長し、その後は成長速度が遅くなって二酸化炭素の吸収量も減っていきます。木の成長の周期に合わせた使い方をして、森林の持続可能性と山間地域の持つポテンシャルを表現したいという思いもありました。試算の結果、森の成長分だけで都市のエネルギーをすべてまかなえることが分かり、森と共に生きる都市「LOOP50」の構想が出来上がりました。

Q:「LOOP50」の考え方は、他の木造建築を考える中でも大切にされていますか?

A:そうですね、木でつくる意味を常に考えています。鉄やコンクリートよりも脱炭素につながるとか、持続可能な街づくりができるとか、リサイクルやリユーズができるとか。あとは純粋に、木の建築って気持ちいいですよね。その気持ちよさは大切にしたいなと思っています。

Q:一方で、木造建築に感じる課題はありますか?

A:たとえば鉄骨は、大林組が東京スカイツリーを建設できたように、社会全体としてあらゆる技術が成熟してきています。一方で、木造は技術も、技術以外の面もこれからだと思っています。一戸建て住宅では一般的に木造が安く、コンクリートの方が高い。けれどもビルになると逆転しています。

Q:確かに不思議ですね。どうしてでしょうか?

A:木造はこれまで、一戸建て住宅専用に流通や加工が最適化されてきました。大型建築に使うような大きな部材は、汎用材として流通しておらず、加工できる機械や工場も限られています。耐火などさまざまな実験にも取り組んでいますが、まだ特別な対応が必要です。大林組としては実績をさらに積んで、業界自体が木造建築を当たり前の選択肢として認識できる未来につながってほしいと考えています。社会的にも、木造建築は求められていますから。もちろんその先には、木を使うだけではなく伐ったら植えるという循環が大切だと考えています。

Q:これから先、坂田さんがしてみたい「つくるを拓く」目標を教えてください。

A:「健康で文化的な暮らし」が最終的な目標です。外に出たら森があるといった自然の豊かさと、スマートワークの実現などの文化的な豊かさが両立した暮らしですね。もちろん脱炭素をめざすなど、持続可能な暮らしであることが大前提です。そのために解決すべき技術的、あるいは社会的な課題にいまも取り組んでいます。

つくるを拓く人#3
坂田尚子・赤松伯英 「木造建築」
(大林組コーポレートサイト)

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