解説

品質を確保しつつ、短工期で完成させるために工夫をこらす

茨城県の岩間工業団地にあるキヤノン化成岩間事業所内に、同社の東日本地区の拠点として計画されたプリンター消耗品の生産工場である。建物は、プラントエリアと付帯設備エリアに分かれ、プラントエリアは防爆エリアと非防爆エリアに分かれている。付帯設備エリアは排水処理エリア、ボイラー室、電気室などからなり、安全性に配慮した平面配置計画となっている。排水処理エリアでは使用量の多い用水の再処理が行われ、環境に配慮されている。

2005年に竣工したC棟の施工では、6階建てのプラントエリア部分の2〜6階の床はチェッカープレート敷きで、つなぎ目は全溶接であったが、プラント機器を設置するため床のあちこちに開口部があり、天井仕上用の足場を床に組むことができなかった。そのため安全に作業できるように吊足場を採用した。

2007年、トナーカートリッジなどの増産に向けた新工場（D棟）の建設を当社が受注した。外観は事業所内の既存建物との調和を図り、内部は生産施設としての機能を優先した設計となっている。施工では、床仕上げが塗り床のためクラック対策を入念に行った。1回のコンクリート打設面積が1,000㎡以下となるよう9区画に分割し、隣り合う区画は収縮の影響が少なくなるよう最低5日間を空けて打設した。また降水確率が30％を超える日は作業を行わず、打設後5日間は湿潤養生し、2週間は人の重さ以上の荷重をかけないようにした。8ヵ月の超短工期の中、塗り床にこれだけ時間をかけての作業は厳しかったが、各階の鉄骨小梁のユニット化などにより工期を短縮した。