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解説

80余年の時を経て生まれ変わった高校野球の聖地

阪神タイガースのホームグラウンドで高校野球の聖地でもある阪神甲子園球場は、1924(大正13)年に当社施工によりわずか4ヵ月半で完成した日本初の本格的野球場である。完成から80年以上を経て老朽化が進んだため、大規模リニューアル工事が行われることになった。「歴史と伝統の継承」をテーマに掲げ、「安全性の向上」と「快適性の向上」をめざした。

野球シーズン中(3月中旬〜9月末)は試合日程が優先されるため、年間で工期として使えるのはシーズンオフの5ヵ月間だけとなり、工程管理が重要な要素となった。2006年に、隣接地に準備工事として「阪神タイガースクラブハウス」の新築と選手駐車場の移設を行った。その後球場本体のリニューアル工事を2007年10月から3期に分けて行った。第1期工事(2007年10月〜2008年3月初)では、内野部分の耐震補強と内外装改修、第2期(2008年10月〜2009年3月初)では内野スタンドを覆う大屋根「銀傘」の架け替え、ロイヤルスイート席の新設、アルプス・外野部分の耐震補強と内外装改修、最後の第3期(2009年11月〜2010年3月初)では甲子園名物の外壁のツタの植え替えや外構、別棟工事など球場周辺の整備を行った。

第2期の「銀傘」の架け替え工事は、多くのクレーンが投入され、マスコミ各社が上空からヘリコプターで撮影するなど大きな注目を集めた。新装された銀傘は従来の約1.4倍の広さとなり内野スタンドのほぼ全体を覆った。銀傘を支える鉄骨はスタンド奥から片持ちで支える構造となり、スタンド中段にあった柱がなくなって、視認性が向上した。

観客席は座席の拡幅および通路の増設を行い、また、グラウンド側に最大で6mせり出し、より迫力あるプレーを楽しむことができるようになった。建物内部には食堂や売店、授乳室も新設・増設され、快適性が向上した。

2004年3月竣工の当社設計施工による阪神タイガースの室内練習場はプロ野球12球団の中でも最大級の広さを誇り、甲子園球場とは阪神タイガースクラブハウスとともに連絡デッキで結ばれている。

2010年3月、すべてのリニューアル工事が完了し、グランドオープンを迎えた。歴史と伝統を受け継ぐスコアボードや天然芝、黒土はそのままに、生まれ変わった甲子園球場で、野球ファンが熱狂するドラマが繰り広げられている。

なお、兵庫県「人間サイズのまちづくり賞」(第12回)、西宮市「都市景観賞」(第5回)を受賞している。

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