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  • アルコタワーアネックス
  • ヴィラ ディ グラツィア

解説

20mの敷地高低差を克服した増築工事

1931(昭和6)年に日本初の総合結婚式場として開業した目黒雅叙園は、「昭和の竜宮城」とも呼ばれる豪華絢爛な結婚式場を備え、東京都指定有形文化財に指定されている「百段階段」があることでも知られている。2007年、最新鋭のオフィスビルやチャペル、エントランス棟を建設することになり、当社が施工を担当した。

施工に当たり、発注者から「工事をしていることを気づかれないようにすること」を要請された。そこで、中庭の仮囲いには樹木や竹林を模した景観写真を貼り付け、工事車両の搬入ゲートには寺社建築を思わせる瓦葺きの屋根や疑似木製の門扉を採用するなど、一見、工事中とはわからないような工夫を施した。

一番の難関となったのは、都心にありながら樹木が生い茂る森林地と20mもある敷地の高低差であった。樹木一本一本に番号を振り、伐採する木を選び、敷地の上部から少しずつ慎重に伐採しながら、掘り下げては平らにする作業を1年かけて実施した。山留め工事では近隣施設の杭と杭の間にアースアンカーを打ち込んで支保工とするしかなく、近隣折衝と同時に、何度も施工計画を練り直して施工した。最終的な山留め壁は総延長535m、アースアンカーは3段で、計186本に及んだ。

杭工事には、傾斜地からの偏土圧を受ける建物として特殊な形のWF杭を採用し、杭の中に本設の鉄骨を設置する「鉄骨支柱建込み工事」を併用している。高い精度管理が要求される工法のため、傾斜計を用いてmm単位で測定しながら入念に施工を行った。

既存の建物に囲まれた状態で、支持構造の異なる複数の棟を施工し、それらを回廊で結ぶ工事となり、施工手順を間違えると手戻り部分が多くなるため、各棟の進捗調整を図りつつ、常に先読みをすることに努め、無事に2011年春の竣工を迎えることができた。

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