大林組技術研究所報 No.88 2024

REPORT OF OBAYASHI CORPORATION TECHNOLOGY RESEARCH INSTITUTE

株式会社 大林組

ごあいさつ



執行役員
技術研究所長

小野島 一

大林組技術研究所報第88号発刊にあたり、一言ご挨拶申し上げます。

今年、2024年の元日に能登地方を襲った令和6年能登半島地震は、日本中の正月の暮らしを大きく揺さぶりました。現地の方々だけでなく、日本全国の多くの人々に大きな衝撃を与えました。この震災では、当初の報道では被害状況が把握しきれず、何が起こっているのか分からない状況が続きました。しかし、最終的には人的被害も含め、東日本大震災や熊本地震に匹敵する大きな災害となりました。さらに、9月には大雨による被害も重なり、二重の災害に見舞われた方々には、改めて心よりお見舞い申し上げます。

大林組では震災発生以降、ゼネコンとしてインフラ復旧などの復興工事に注力してまいりました。しかし、技術研究所としては学会などの調査に同行することはあったものの、生活インフラの復旧が遅れたため、現地への負担の影響などを鑑み、独自の調査はしばらく実施できませんでした。春になり一部の道路等が復旧したことに伴い、独自に被害状況を確認するための調査隊を派遣いたしました。今回、所報を発刊するにあたり、この調査に基づく能登半島地震での被害状況を独自に特集記事として報告することにいたしました。今回の地震のプロセスと建設物への被害の詳細についてすべて解明できたわけではありませんが、まずは技術研究所が確認した建築・土木分野での被害の状況と、今後考えられる対策工法などを取りまとめておりますので、ご活用いただければ幸いです。

さて、今回の所報では、「レジリエンスを高める技術開発」と題して特集を組みました。今ご紹介した令和6年能登半島地震被害調査報告に続き、橋脚補強工法「ザクツレスバー™」、建築物向け構造ダンパーである「シアリンク型ブレーキダンパー」をはじめ、地震災害に対するレジリエンスを高め、建築構造、土木に関わる実プロジェクトに活用できる技術について特集論文を組んでおります。また、特集技術紹介においては「免震フェンダー®」をはじめとする地震対策とリスク把握に関する技術を紹介いたします。特集報告では構造解析技術を中心として地震動解析も含めた多様な解析技術について報告いたします。論文においては幅広く昨今の重要テーマである脱炭素、既存躯体再利用、害虫調査やワークプレイスのウェルネスに関わる論文を掲載いたします。特に東南アジアの当社の現地子会社オフィスにおけるウェルビーイングオフィスの研究については、今回、大林グループのグローバル化を目指して国外に向けた論文として、全文英文で掲載いたします。そのほか、木造建築、ICT利用から新素材のご紹介、建設ロボットの適用まで幅広いトピックスを取り扱いますので、是非業務に役立てていただければと存じます。

この所報には萌芽的なものから実プロジェクトへの適用が期待されるものまで入り混じっていますが、これは大林組技術研究所の活動範囲を示していると思います。読者の皆様の参考になれば幸いです。

2024年12月

▲ このページの先頭に戻る