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2017.06.16

東京外かく環状道路本線トンネル(北行)東名北工事

首都圏を地下でつなぐ日本最大のシールド工事が動きだす
東京外かく環状道路本線トンネル(北行)東名北工事
首都圏を地下でつなぐ日本最大のシールド工事が動きだす

外径16.1mの巨大シールド機は東名高速道路脇の地下立杭(写真中央奥)から発進(撮影:西山芳一)

首都圏では、慢性的な渋滞の解消、災害に強い街づくりをめざして、幹線道路網の重要な骨格となる3つの環状道路が急ピッチで整備されている。現在開通区間が約4割の東京外かく環状道路(外環道)は、首都高速中央環状線、首都圏中央連絡自動車道(圏央道)と共に、その完成が待たれている。

3つの環状道路の整備によって都心への通過交通の流入が抑制され、渋滞が大幅に緩和される

首都圏を結ぶ3つの環状道路

外環道は、都心から約15km圏域をぐるりと結ぶ。全長85kmのうち、すでに大泉ジャンクション(JCT)から三郷南インターチェンジ(IC)までの約34kmが開通している。3つすべての環状道路が整備されれば都心への通過交通の流入は抑制され、渋滞の緩和によって首都圏の交通状況は大きく改善される。

住宅密集地の下を行く外環道整備計画
外環道が完成すれば、東名JCT~大泉JCT間の所要時間は12分となる

外環道が完成すれば、東名JCT~大泉JCT間の所要時間は12分となる

未開通区間のうちの、東京都下となる区間、東名高速道路(東名高速)の東名JCT~関越自動車道(関越道)の大泉JCT間は、ちょうど住宅密集地を通ることになる。そのため区間延長16kmとなる本線は大深度地下方式のトンネル構造を基本に計画、沿道地域の環境に配慮した。

大林組は、東名JCTから北に向かった井の頭通り直下までの約9.1kmで、外環道本線トンネル(北行)を構築するシールド工事を担当している。シールド機1機で掘進する距離としては日本有数。東名高速の脇に広がる施工基地では、巨大シールド機掘進に向けての準備が進んでいた。

(北行)東名北工事縦断面図
技術が詰まった日本最大級のシールド機

日本最大を誇るシールド機の組み立てが始まったのは2016年6月。本体は250のパーツに分けられて神戸から陸送され、500tと国内に数台しかない800tのクレーンを使った昼夜作業で2017年1月末に完了した。組み立てに8ヵ月を要したシールド機には、土木本部生産技術本部シールド技術部をはじめ機械部や東京機械工場などが持つ、最新鋭の技術が詰め込まれている。

カッターヘッド装着前のシールド機。組み立て作業は地下70mの立坑内で行われる(撮影:西山芳一)


二重カッター方式のシールド機

二重カッター方式のシールド機

二重カッター方式のシールド機

カッターヘッドに配置された無数のビット

カッターヘッドに配置された無数のビット

立坑で発進を待つシールド機

立坑で発進を待つシールド機。500m/月の掘進能力を有する

まず、外周部と内周部を別速度で回転させる二重カッター方式(省エネシールド) 。掘削された土砂が集中しやすい内周部を、外周部の約2倍の速度で回転させ、土砂の流動性を上げることで掘削の速度と効率を向上させている。

加えて、内周部のカッターはトンネル進行方向に30cmスライドさせることが可能で、内周部の先行掘削による芯抜き効果がさらなる効率化につながり、従来のシールド機と比較して消費電力30%減という省エネ効果が期待されている。

カッターヘッドに取り付けられているビット(掘削効率を上げる鋼製の刃)にも工夫が施されている。一つのビットは複数の刃で構成されているが、強い衝撃がかかる両端の刃にはじん性(粘り強さ)が高いタイプ、掘削量の多い中心部は摩耗に強いタイプの超硬合金チップが使われており、長距離掘進に耐える長寿命なビットとなっている。

また、長短をつけたビットを段差配置することで、長いビットが摩耗した際に短いビットがその役目を担い、交換を不要とする工夫もあるのだ。

ほかにも、掘進とセグメントの組み立てを同時に行うことができる機能や、硬い土砂の抵抗力を減少させて安定的な掘削を可能とするために、自動的に添加剤を注入し土の流動化を図るシステムが搭載されているのも特徴だ。

さまざまな計測データを統合することで、異常発生時に対処方法を自動でガイダンスしてくれるモニタリングシステムなど、万全な装備が施されている。

トンネル本体の壁となるセグメント。トンネル内径は14.5m、鉄筋コンクリート製のパネルの厚さは65cm

シールド機で取り付けるセグメント(トンネル本体の壁)。鉄筋コンクリート製で厚さは65cm

掘削土砂・資材の大規模物流システム
東名立坑の発進基地

東名立坑を中心に物流システムを構築した施工基地

巨大シールド機による大深度超長距離シールド工事では、工期の短縮をめざした高速施工を求められた。

「日本の大動脈・東名高速や閑静な住宅街に近接していること、車両の出入りは東名高速を原則とすることなど周辺環境に配慮して、大量の資機材を効率的に運行管理できる物流システムを施工基地内に構築することが必要だ」と所長の大井は語る。


土砂や資材の物流を徹底管理

地上からの資材搬入と掘削した土砂搬出の流れ


長さ200mのベルトコンベヤーを高さ18mの防音ハウスで覆う

長さ200mのベルトコンベヤーを高さ18mの防音ハウスで覆う

シールド機の地下掘削で計画されている土砂の搬出量は、1日当たり最大約6,000m³。大型ダンプトラック200台が6往復する計算だ。また、セグメントや工事機械などをはじめ、隣接工区の搬出入もあるため、多数の車両が往来することになる。ポイントは、現場内での車両の滞留を防ぎ、東名高速にスムーズな出入りができるかだ。

まず取りかかったのはシールドマシンの組み立てヤードを確保することだった。住宅街との境にあった崖線ののり面を3,000m²ほど造成して敷地を広げた。

掘削土の搬出用ダンプトラックにはGPS(全地球測位システム)を取り付けて位置情報を把握・管理する運行管理システムを搭載した。また、車両運行管理室には、首都圏の道路マップ上に各車両の現在位置を点示するシステムを配備。一目瞭然となった車両の運行状況が、分単位での入退管理を可能とし、円滑な物流を支える大きな役割を担った。

国家プロジェクトを成功に導く

超大規模工事を円滑に、そして確実に遂行するには、騒音や振動、粉じんなどの発生を防止して近隣住民からの理解と協力を得ることや、発注者などの工事関係者と良好な関係を築くことが不可欠だ。そのために「目配り・気配り・心配りが重要」と話す所長の大井は、勉強会や報告会をスタッフと共に開催。経験や技術を伝えることで知識とやる気を醸成し、業務の偏りや日々の課題解決を図っている。

「全員のベクトルを一致させて国家的大プロジェクトを成功に導きたい」と語る所長の大井からは、工事への誇りと気概が伝わってくる。大林組の土木技術を結集させたシールド工事が、動きだしている。

東京外かく環状道路本線トンネル(北行)東名北工事

(取材2017年1月)

 

●工事概要

名称:東京外かく環状道路本線トンネル(北行)東名北工事

場所:東京都世田谷区~武蔵野市

発注:中日本高速道路

概要:シ ールドトンネル本体工延長9,099m(シールド機外径16.1m、セグメント外径15.8m、内径14.5m、覆工厚650mm)、床版工7,670m、横連絡坑工8ヵ所、地中接合工1ヵ所

工期:2014年4月~2019年6月

施工:大林組、西松建設、戸田建設、佐藤工業、錢高組