東京スカイツリーのシルエットはとてもスリムですらっとしていますね。

 実はその裏側には、今回の建設に使われた当社独自の技術があるんですよ。シルエットがすらっとして見える理由は足元にあります。高さが634mもあるのに対して足元の幅はわずか約68mしかありません。高さ333mの東京タワーの足元の幅が約95m。高さが倍近くあるにもかかわらず足元の幅は約27mも狭いのです。その背景には、下町の限られたスペースに建設したという事情もありました。
 高さへの挑戦にはまず強度という大きな課題があります。634mもの高さとなると、強風や地震の影響で、足元には大きな力が加わりますし、まして建設されたエリアは地盤が強いとはいえない場所です。
 仮にタワーが右に倒れるような力が働いているとすると、右側の足元に「押し込み」の力がかかります。そして、反対側の足元には「引き抜き」の力が加わります。その両方の力に抵抗できる強い杭が必要です。そこで採用されたのが、大林組が開発した「ナックル・ウォール工法」です。

ナックル・ウォール工法で使用される壁杭は写真のように大きなもの。側面に付けるナックル部分だけでも人間の身長以上の大きさがある。

世界一のタワーをつくったのは120年受け継がれた「技術」と「こころ」 株式会社大林組 取締役社長 白石 達 『インタビューを読む』

(c) 日経BP社「日経ビジネスオンライン SPECIAL」初出:2012年3月2日~2012年4月2日