東日本大震災では作業員やタワーの構造体に被害はなく、今こうして無事竣工することができました。その背景にあったのは、「すべてを想定外にしない」ということだと思います。建設現場のすぐ側には下町の住宅街が広がり、鉄道も走っています。ちょっとした気の緩みが大事故につながりかねません。毎日のしっかりとした仕事の積み重ねができなければ、我々の仕事として失格なのです。現場では「ネジ1つ落とさない」気持ちで毎日の作業に取り組みました。当然、地震に対する対策もしっかりと取られていたため、被害を未然に防ぐことができました。
東京スカイツリーは言うまでもなく、未知の高さへの挑戦でした。「リフトアップ工法」だけでなく、高所での作業を極力避け、可能な限り地上で組み立てたことで、安全面はもちろん、それぞれの品質を高めることに成功したのです。たとえば、展望台部分でも可能な限りブロックごとに地上でつくってから設置するなど、安全と施工効率の両面を追求すると同時に、高い品質のものを提供することができました。
(c) 日経BP社「日経ビジネスオンライン SPECIAL」初出:2012年3月2日~2012年4月2日