
東京スカイツリーの中心には、五重塔の心柱(しんばしら)になぞらえた、鉄筋コンクリート造の円筒(心柱)があり、地震や台風などの揺れを抑える制振装置として使われています。
この心柱はゲイン塔の組み立てスペースとして使われた後の、非常に限られた空間と工期でつくらなければなりませんでした。
通常、コンクリート構造物をつくる時には、鉄筋、型枠工事用の資材や足場などが必要となります。ところが、すでにゲイン塔を設置した後ですから、上から資材を入れることができません。
また、塔体内部は直径が約10mに対し心柱は直径が約8mもありました。これでは通常の足場などは組めません。しかも、心柱建設に許された時間はわずか半年のみだったのです。そこで用いられたのが「スリップフォーム工法」です。この工法により工期が短縮されただけでなく、システマチックに安全に進めていくことができました。
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心柱を設置するタワー中心部。型枠、作業用の足場、荷揚げ装置や安全設備などが一体化した装置自体が、滑り上がりながら連続してコンクリートを打設し、内径約10mの空洞に直径約8mの心柱を構築する。

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(c) 日経BP社「日経ビジネスオンライン SPECIAL」初出:2012年3月2日~2012年4月2日