
そのように思われる方も多いかもしれませんが、実は危険が伴う高所作業を極力、減らす工法を用いているのです。その工法についてご説明しましょう。
東京スカイツリーの一番上のアンテナを取り付ける部分を「ゲイン塔」と呼びます。このゲイン塔部分は地上で組み立て、「リフトアップ工法」により、634mまで一気に引き上げました。
この工法には安全面ばかりでなく、品質確保や工期短縮においてもメリットがあります。ご質問のように、もしゲイン塔を地上600mで組み立てるとしたら、危険が伴うだけではなく、風の影響も受けます。風は、鉄骨を組み合わせる際に用いる溶接作業の大きな妨げにもなります。そこで、心柱(しんばしら)ができる前の塔体内部の空洞を利用して地上で溶接し、上に引き上げる方法を取りました。
ゲイン塔と塔体の隙間が一番狭いところで7cmしかなかったことや、熱を帯びると曲がる鉄の特徴など、いくつもの難関をクリアしながら無事ゲイン塔を構築したのです。
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写真下から延びているのがゲイン塔を運ぶための台車のレール。その先にあるのがゲイン塔を組み立てる空洞。空洞上部にゲイン塔の最下部が少し見えている。

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(c) 日経BP社「日経ビジネスオンライン SPECIAL」初出:2012年3月2日~2012年4月2日