トンネルをつくる人たち Tunnel Construction Professionals

ロボティクス生産本部編

ロボティクス生産本部 生産技術第一部 部長 森野 弘之

ロボティクス生産本部 生産技術第一部 部長 森野 弘之

「ロボティクス技術がトンネル工事の新時代をつくる」

工事の種類を問わず柔軟な発想で開発

ロボティクス生産本部は2019年、機械部という部署名から改称しました。自動化や遠隔化の技術も進みつつあり、機械そのものだけでなく、AIなどの情報処理技術や高速大容量通信技術の領域も含めた「ロボティクス」をさらに発展させなければならない時代になっています。私の所属する部門は、トンネル工事で使うロボティクスの技術開発を担っています。
トンネルには、主に山岳トンネルとシールドトンネルの2種類があります。爆薬を使って硬い岩盤を掘り進める山岳トンネルでは、ダイナマイトを入れるための穴をつくる機械や、出てきた土をハンドリングする機械などが使われています。山岳トンネルは、地山が見えている不安定な場所で工事を行うため、より安全な環境をつくるための技術が求められます。
シールドトンネルは、シールドマシンや、セグメントと呼ばれる構築物の中に人が入って掘り進めるため、山岳トンネルのように岩や土の塊などが人の上に落ちてくるという危険はありません。ただし、機械に挟まれたり墜落したりするリスクがあります。
また、シールドマシンの後方部には100mにもおよぶさまざまな設備が連なります。準備段階から「どのシールドマシンをどの設備と組み合わせて使うのか」ということを適切に選定しなければなりません。
ただ、トンネルなどの構造物をつくるうえで、「掘る」「運ぶ」「持ち上げる」「下す」「つなぐ」「切断する」などの基本的な動作においては、山岳トンネルでもシールドトンネルでもやるべきことは同じです。シールドトンネルのみで使ってきた技術が山岳トンネルの工事に役立つこともあります。また、その逆もしかりで、山岳トンネルで使った技術がシールドトンネルに生かされる場合があります。そのため技術部門では、山岳とシールドでチームをあえて分けず、横断してアイデアを出せるようにしています。

ロボティクス生産本部 生産技術第一部 部長 森野 弘之
東日本/西日本ロボティクスセンターは強力な存在

大林組は、ロボティクス生産本部とは別に、東日本ロボティクスセンター(埼玉県)・西日本ロボティクスセンター(大阪府)も運営しています。ロボティクスセンターは、機械の整備・管理や、技術の開発・実験を行う場所です。自分たちの拠点で開発を突き詰めることができる点は、大林組ならではの強みだと思います。場所を借りる手間がかからないため、スピーディに行動できるというメリットもありますね。
ロボティクス生産本部はロボティクスセンターと密に連携を取っており、開発段階の技術をロボティクスセンターで実験することも多々あります。これからは事業の可能性を広げるためにも、「大林組オリジナル」のロボティクスをさらに多く打ち出していきたいと考えています。

「目標に向かって一歩ずつ進む」という達成感

自分たちで提案した技術が完成したときは、とてもうれしく思います。うまくいかなかった場合は、反省を踏まえて次回に活かすように心がけています。最近の技術開発で特に印象に残っているのは、山岳トンネルで鋼材を立て込むために使う「クイックテレクターTM」です。自分たちで独自のコンセプトをつくり、装置や制御の設計を業者の方と一緒に考えながら進めました。技術開発には、構想から含めて2年前後の時間がかかるものです。長い道のりの中で、最終目標に向かって一歩ずつ進んでいくことにやりがいを感じます。
また、ロボティクス生産本部は技術開発だけでなく、営業支援も担っています。工事の見積もりや、機械の選定をする際の提案を行うという業務です。技術開発とはまた別の仕事ですが、現場をサポートするという点は同じです。トンネル工事は、私たち機電職員が活躍できる場面が多いうえに、一つひとつの現場の規模も大きいため、受注に貢献できたときは達成感があります。

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安全化・効率化で新たな人材獲得をめざす

「トンネルの現場で働きたい」と思ってくれる若い人材を増やすためにも、ロボティクスを導入することで危険作業から人を遠ざけ、現場の安全性を上げることが必要不可欠だと考えています。
例えば、トンネルの中に入らなくても、自宅にいながらリモコンで現場の機械を動かすことができれば安全です。なおかつゲーム感覚で仕事を楽しむことができるでしょう。また、このような技術が進歩すれば複数の機械を同時に動かすことができるため、効率も上がり省人化につながります。安心して働くことのできる時代をつくるために、今までのような「肉体労働」のイメージを脱することをめざし、日々開発に携わっています。
通信やAIの知識に長けた人材も、今後さらに求められます。ただし、単に技術に詳しいだけでは、ロボティクス生産本部の仕事は務まりません。私たちの仕事の根幹にあるのは、土木工事や建設工事の現場を支えること。工事に関わるさまざまな人と協調し、皆の声を聞く姿勢を持つことはいつの時代でも大切です。