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解説

世界最大級・最先端の半導体工場をターンキー方式でつくり上げる

エルピーダメモリは、日本で唯一のDRAM(コンピュータのメインメモリに使用される半導体記憶素子)専業メーカーである。2004年、広島工場に計画された新工場は、最大稼働時に月産6万枚超のDRAM生産能力を誇る世界最大級の規模であった。当社は、建物だけでなく生産活動を支える設備(クリーンルームやプロセスサポート設備)までを一括して施工する「ターンキー方式」で受注した。

着工9ヵ月後に生産装置の搬入ができるように、との非常に厳しい工期に加え、日々進化する半導体業界の情勢を反映して、発注者の設計変更の要請に柔軟に対応していく必要があり、着工時ではなく、完成した時点で世界最先端の工場として稼働できることが求められた。

発注者から提示されたOBR(基本的な要求事項)を基に、建築・設備・プロセスの設計チームと施工部門が一体となって、綿密なスケジュールや施工計画を作成したが、その際、2001年に同敷地内にDRAM工場を設計・施工で完成させた経験を活かすことができた。フレキシビリティの高い工場にするためには無柱の大空間が必要だが、微振動対策を考えると難しい設計条件であった。そこでトラス梁の構造をV字型にしてクリーンルームの下部に組み込み、躯体の強度を増すことで32mの無柱空間を実現している。

工事では、既設工場の生産に影響を与えないことも重要課題の一つであった。既存工場嫌振エリア内に振動センサを設置し、リアルタイムに周波数分析を行い、許容設定値(警報・注意報)を超えると、回転灯、ブザー等で作業員に注意喚起するなど、作業環境の改善を図った。また、本装置は通常振動と工事振動を判別し、誤報を少なくする手法がとられている。

工期を短縮するために、外装工事と並行して内部のクリーンルームを構築したが、埃が入り込まないよう、4段階のステップを踏んで、徐々にクリーンルーム内の洗浄度を高めていくプロトコル管理(段階的施工管理)で対応した。また、建材から微量に出る化学物質(アウトガス)の問題についても、当社技術研究所で検証済みの材料を用いて対処した。

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