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解説
丸の内・皇居前に歴史あるホテルを生まれ変わらせる
1961年に皇居前に開業したパレスホテルは、日本の経済発展とともに、国内外の要人をはじめ数多くのゲストを迎え入れてきた格式あるホテルである。2009年、大手町・丸の内・有楽町エリアの活性化や地域環境に寄与するため、当社の施工により建替え工事がスタートした。
本工事の最大の特徴は、皇居前というロケーションにある。周辺環境との調和、環境負荷の低減、セキュリティ対策が必須となった。セキュリティ面では、現場各所にWEBカメラを設置するとともに、2,000人を超える作業員の入退場を指静脈による生体認証システムで管理した。敷地南側に隣接する和田倉濠のお濠端の山留め壁には、止水性が高く低振動のTRD工法を採用。さらに、山留め壁と石垣の間に流動化処理土で連続した止水壁を施工した。これにより重機の振動から石垣を防護し、お濠へのソイルセメントの流出を防止した。
約1万㎡の敷地一杯、深さ26mの地下工事においては、山留め支保工を7段グラウンドアンカーとした総掘りとし、躯体工事に2段打工法を採用した。そのため切梁のないオープンな状態で既存建物の地下解体と掘削工事を行うことが可能となり、地上・地下工事を並行して進めることで工期短縮を図った。また、既存建物の地下躯体を山留め壁の一部として利用したり、トラック桟橋や鋼製切梁などの仮設材を最小限とするなどにより、短工期・高品質・低コストを図った。
建物は3階までは一体で、4階以上はホテル棟とオフィス棟が別々になる構成である。既存躯体の解体・掘削・鉄骨・1階先行床工事など、複雑に入り組んだ工事を安全に効率良く進めるために、毎日施工シミュレーション図を描き、綿密な作業調整を行った。ホテル棟は大中小の宴会場、レストラン、チャペル、神殿、フィットネスクラブなど、多彩な施設があるため、躯体工事や仕上工事も複雑な作業となるうえ、客室のタイプも一様ではない。複雑な外装を大人数で一気に仕上げるために、高層建築では珍しく外部を覆い尽くす足場を組んだ。オフィス棟は心地よい執務環境を追求したハイグレードな設計になっており、窓からは周囲の緑が一望できる。
昼夜ローテーションの24時間体制で作業が進められ、2012年2月、皇居お濠端に、最新の設備に生まれ変わった歴史あるホテルが堂々たる姿を現した。