トンネルをつくる人たち Tunnel Construction Professionals

ロボティクス生産本部編

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ロボティクス生産本部生産技術第一部施工支援課 課長羽鳥 哲夫

東日本ロボティクスセンター施工技術部土木機械課 副課長柿崎 道洋

「長年の現場経験を活かして施工をサポート」

忘れられないトンネル現場での出来事

〈羽鳥〉
私は、23年のキャリアのうち20年ほど現場で働いてきましたが、2022年4月に施工支援課の課長として赴任しました。施工支援課では、現場で働く社員から相談を受けたり、営業のサポートを行ったりしています。自分自身が多くの現場を経験してきて、彼らの気持ちや立場がよく分かるからこそ、現場の課題解決をしっかりと支えたいと思っています。

〈柿崎〉
私は入社して15年目になりますが、シールドトンネル現場も山岳トンネル現場も経験してきました。これまでの経験が東日本ロボティクスセンターでの業務に役立っており、実体験をもとに現場で起こりうることを予測し、施工計画を考えています。現場で働く皆さんは同じ仲間だという認識でいるので、「皆で一緒に工事を成功させたい」という気持ちで業務にあたっています。

〈羽鳥〉
私は入社2年目で、シールドトンネルの現場に初めて従事しました。工事中に予想外の地中障害物に遭遇し、「どのように解決するのだろう」と思いながら見ていました。すると、先輩たちは、土砂を凍らせる「凍結工法」を使い地中を固め、障害物を取り除くことで問題を回避しました。凍結工法はあらかじめ計画したうえで行うことはあるものの、急きょ実施することは少ないものです。20年ほど前のことですが、当時の先輩たちによる大胆な判断はいまだに印象に残っています。その後、自分がある程度ベテランになってから担当した現場で、施工中にトンネルの後方部が損傷したことが原因で出水し、トンネルの半分が水に浸かってしまうということがありました。思わぬ事態に焦りも感じましたが、冷静に工事を中断して、まずは安全を確保したうえで対処を行い、最終的にはトンネルを修復することで無事に竣工することができました。20年前のあの頃に、予期せぬトラブルに対応した例を見た経験が活きたと思います。

羽鳥 哲夫 ロボティクス生産本部生産技術第一部施工支援課 課長

羽鳥 哲夫 ロボティクス生産本部生産技術第一部施工支援課 課長

〈柿崎〉
私が初めてシールド工事の現場を経験したのは、入社7年目のことです。それまでは山岳トンネルの現場経験のみだったため、緊張の日々でした。シールド工事では、工程が終わるとシールドマシンを引き上げて解体するのですが、クレーンがシールドマシンの最後の1ピースを吊り上げて、その背景に夜の東京タワーが見えた瞬間、涙が出そうになったのです。もちろん、そのあとも気を引き締めて行わなければならない作業が残っていたのですが、一区切りつき、達成感と安心感で感極まりましたね。

トンネル工事を止めないために

〈羽鳥〉
どのようなトンネルも、共通の目的は「最後の到達に向けて掘り進める」ということ。少しずつでも前進していくことがトンネル工事のやりがいだと思います。特に、シールドトンネルは比較的距離が長いため、無事に到達したときの達成感も大きいです。

〈柿崎〉
シールドトンネルはシールドマシンの中に人が入って掘り進めるため、山岳トンネルのように肉眼で土の状態を見ることができないぶん、マシンに付属している計測器で土の圧力や油の量をデータでチェックしています。

〈羽鳥〉
大勢の人が働き、たくさんの機械が動いているトンネル工事の現場では、工事の前進を止めないことも重要です。一度ストップしてしまうと、その時間のコストがかかってしまうからです。そのため現場では、一人ひとりが工事を止めないための努力をしています。「これ以上進めると機械が壊れてしまう」というような事態になったときは、無理をせずに中断することも大切ですが、できる限り切羽(きりは)を止めず、早く復旧させることを常に心がけています。

〈柿崎〉
トンネル工事を止めないように努める風土は、これからも受け継がれてほしいですね。現場だけでは「工事をいったん止めるか、続けるか」という判断ができないような難しい局面もあります。そのようなときには、私たちロボティクスセンターが本部などで支援することもあります。センターには現場の経験者もおりますので、トラブルが起きた際も現場目線でサポートすることができています。

柿崎 道洋 東日本ロボティクスセンター施工技術部土木機械課 副課長

柿崎 道洋 東日本ロボティクスセンター施工技術部土木機械課 副課長

自動化が進むシールドトンネル、さらなる進歩へ

〈柿崎〉
人材不足や熟練工の高齢化は、業界全体の課題です。省人化を進めるために、AIなどを利用した技術の導入は必要不可欠になってくるでしょう。シールドトンネルで扱うロボティクスには、遠隔化や自動化の技術がすでに使われています。今後、ロボティクスセンターとしては「自律化」を進めていきたいと考えています。

〈羽鳥〉
AIが上手に学習を行い、熟練工と同じ技量で作業できるようになるのが理想的ですね。ただし、遠隔化や自動化、自律化が進んでも、現場で働く人々の知恵や感覚はこれからも求められると思います。匂いや音、触った温度などから、人の直観で違和感を見つけることもあるからです。また、作業員の方々との日常的なコミュニケーションも、課題発見のきっかけにつながります。そのため、ロボティクスの技術進歩を進めつつ、人のつながりや五感の存在も大切にしたいですね。

ロボティクスセンター施設内にて

ロボティクスセンター施設内にて

〈柿崎〉
今もこれからも変わらないのは、私たちはロボティクスを通じて「現場の当たり前」をつくるということです。施工現場に電気が通ることも、シールドマシンが動くことも、工事を進めるうえで当然のベースですが、その裏には電気や機械の技術があります。一つひとつの工事がスムーズに進むよう、今後も「当たり前」をスマートに整えていこうと思います。

〈羽鳥〉
トンネルの工事には大変なこともあります。施工支援課として、現場の後輩にはトンネル工事というスケールの大きな現場に携わることの魅力を伝え、不安や悩みを少しでも軽くしてあげられたらと思っています。引き続き、現場最優先でサポートを進めます。