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  • 3号ホーム拡幅工事
  • 拡幅工事完了

解説

ドーム屋根に覆われた橋上駅と大型複合ビルに挑む

JR大阪駅は1日に1,520本の列車と85万人の旅客が往来し、周辺の私鉄・地下鉄などの駅を含めると1日250万人の乗降客が行き来する西日本最大の交通拠点である。

大阪駅開発プロジェクトは、駅と地域の一体化を図り、活力あふれるにぎわいの拠点として関西再生のシンボルとなることをめざしたもので、2004年4月にホーム上空に橋上駅とドーム屋根を構築する大阪駅改良工事に、2006年8月には駅直結の大型複合ビルである新北ビル新築工事に、それぞれ着手した。新北ビルはJR大阪三越伊勢丹を核とし、物販を中心とする専門店群(ルクア)、駅に直結したアトリウム空間、フィットネス、シネマコンプレックス、オフィスなどで構成されており、当社JVは百貨店および専門店群の内装工事も含めて施工した。

大阪駅改良工事および新北ビル新築工事ともすべての荷捌き・搬出入は駅北側の北ヤード(梅田貨物駅跡)から行い、改良工事の実作業は深夜2時前後の終電後に開始された。新北ビル工事も営業線近接工事を深夜に行ったほか、予定工期を達成するために躯体・外装の大部分も昼夜にわたり工事を行った。

新北ビルの地下工事では高架橋際で深さ20mの掘削工事を行う際の安全性を確保するため、駅との間の山留め壁にOWS工法を採用、さらに変状抑止対策としてソイルバットレスを築造した。列車が走行する際に運転手の視界に入らぬよう、新たに低空頭型ハイドロフレーズ掘削機を開発し適用した。

新北ビル南面直下の新5号ホームは工事途中から使用開始され、また駅の御堂筋口・中央口のコンコースから駅北側の新北ビル工事エリアを抜ける旅客誘導用仮通路の夜間切り替え工事は延べ20回を数えた。

大阪駅の南北をつなぐ橋上駅の工事では、新北ビル中央のアトリウム部分に構台を設置して鉄骨を地組し、夜間にジャッキを使ってホーム上空に送り出し、ホーム上に予め建て込んでいた鉄骨柱にボルトで固定した。橋上駅は幅約40m、長さ約100m、総重量は3,600tに及び、作業は深夜1時半から4時までの2時間半に限定されるため、入念な施工計画が求められた。橋上駅を送り出すスピードは1分間に約50cmで、5つのホームをまたぐ全長90mを5回に分け、鉄骨地組から送り出し完了までを4ヵ月で行った。さらにドーム屋根の両端となる南北架構を組み立て、橋上駅から環状線ホーム上に繰り出す東西架構の進捗に合わせてスライドさせた。

橋上駅の上空を覆う巨大なドーム屋根は、新北ビルの12階部分と橋上駅南側の東西架構に斜めに架かっており、東西約180m、南北約100m、総重量は約3,500tで、その傾斜は最大23度にもなる。ドーム屋根は17列のトラスで構成され、1列は8つのトラス部品が組み合わせられている。トラスは新北ビルの屋上で地組した8つの部材を橋上駅上に設置したクローラークレーンを使ってベント構台上で組み立て、組み立てたトラスを東西にスライドさせながら行った。ドーム屋根の支持部には地震動を効果的に低減する免震技術として、新北ビル側には一体型の積層ゴムと鋼製U字型ダンパー、東西架構側には十字すべり支承が採用されている。

営業線近接工事の中でも極めつきの工事となったのは、3号ホーム(京都線)の拡幅工事である。既存ホームの北側に幅4m、長さ250mにわたってホームを拡幅するもので、2010年10月9日から12日の3日3晩72時間で完了させた。事前に実物大のホームを作って試験工事を入念に繰り返して実作業に臨み、最終日となった10月12日には全職種が仮囲いの撤去や資材搬出に加わり、予定時間を大幅に短縮して初発列車を待つことができた。早朝4時、総括所長から一斉召集の声がかかり、ホームに関係者全員が集まって全員で万歳三唱、工事に携わった者全員の達成感が最高潮に達した瞬間となった。

2011年5月4日、大阪駅は大阪ステーションシティとしてグランドオープンし、約55万人の来場者を迎えた。

新北ビル工事は、最盛期には1日3,500人以上(別途工事を含めると5,000人)の作業員が従事し、当社史上最長の無災害記録718万時間を達成し、2011年度安全衛生厚生労働大臣表彰(優良賞)を受けた。

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