トンネルをつくる人たち Tunnel Construction Professionals

ロボティクス生産本部編

ロボティクスセンター画像1

ロボティクス生産本部生産技術第一部施工支援課 副課長山本 信吾

山岳トンネル工事事務所 工事長(機電担当)樋下 祐輔

「一人ひとりの知恵を結集させ、課題解決へ」

機械・電気のスペシャリストとして

〈山本〉
私は大学時代、機械工学を学んでいました。トンネルの建設現場では、毎回異なる機械に出合うことができます。新しい機械を導入するときは、まず自分自身が仕組みや機能、特徴などを知り、さまざまな機械の情報を作業員の方に理解してもらう必要があります。そのため、誰にでも分かるように教えるということも重要な任務です。また、現場では予期しないトラブルも発生します。どのようなときも、私たち機電職員が慌てずに状況を整理し、解決策を判断して速やかに対処します。そのあとも同様のトラブルが起きないよう、現場全体にフィードバックを行い、次の対策を練ります。日々経験を積むことでトラブルシューティングが確立され、現場運営の指揮を柔軟にとることができるようになるので、的確に現場の旗振りができたときは達成感を得られますね。

〈樋下〉
私も同じく、機械工学を専攻していました。なぜ建設会社の大林組に入社したかというと、「設計や品質管理といった仕事をするのではなく、機械を実際に見て、触れて、道路やビルといった大きな構造物を一からつくりたい」という思いがあったからです。実際に、施工計画や施工管理などに携わりながらも、現場の機械を自分の目で見たり、故障や不具合の原因をつきとめて直したりすることもあり、入社前にやりたいと思っていたことが実現できていますね。また、現場に電気を通し、工事で使う機械の組み合わせを計画するのも機電職の仕事です。土木職・建設職のメンバーから機械・電気の分野で全面的に頼りにされているからこそ、身も引き締まります。

〈山本〉
機電職は、ひとくちに「機械・電気」といっても、強みや専門分野が各自で異なります。また、技術開発の際には関係者で何回も打ち合わせを重ね、現場のニーズに合った機械ができあがっていきます。一人では解決できないことも、皆の知恵を集めることで課題の突破口が見つかります。

山本信吾 ロボティクス生産本部生産技術第一部施工支援課 副課長

山本 信吾 ロボティクス生産本部生産技術第一部施工支援課 副課長

〈樋下〉
ロボティクスの幅広い知識が求められる時代ですから、最近の大林組の機電職員には、機械・電気以外を専門としている人もいますね。女性社員も増えてきました。東京都清瀬市の技術研究所で機械・電気関連の研究に携わるメンバーもいて、人材が多様化しています。

垣根をこえて広がる情報共有の輪

〈樋下〉
現場で働く機電職のメンバーは、経験年数が浅くても一人で現場に配属されることがあります。しかし大林組には、施工のバックアップを担うロボティクス生産本部やロボティクスセンターが設けられているため、心強いです。私は入社して14年目ですが、多くの時間で山岳トンネル現場や施工支援に携わってきました。ロボティクス生産本部・ロボティクスセンターには、トンネル現場をいくつも経験してきた先輩が多数在籍しています。初めての施工方法で分からないことや、急なトラブルへの対応で困ったことがあっても、先輩方に相談すれば、過去の類似の経験・実績から適切なアドバイスがもらえます。また時には、丁寧な資料を作成したうえで納得するまで説明してくれます。

〈山本〉
私自身、経験が浅い状態で現場に赴任したときは、技術的な相談や些細な質問があっても、どの部署に相談すべきか分からない状態でした。そこで現在、ロボティクス生産本部では、現場の孤立感や悩みを払拭(ふっしょく)するための取り組みを積極的に進めています。例えば、Teamsなどの情報共有ツールを利用して、現場に配属されている機電職のメンバーに、画面共有やビデオ通話機能を活用しながら、ロボティクス生産本部がリアルタイムでサポートできるようにしています。若手の機電職員が一人だけ配属されている現場でも、図面・写真を見ながら一緒に打ち合せできるため、的確なアドバイスをしたり、マンツーマン指導をしたりすることが可能です。

〈樋下〉
情報を広く共有する取り組みは非常にありがたいです。日ごろからチャットなどで、「私たちの現場では、問題をこのような手段で解決しました」「困っていることがあるので、誰か知恵を貸してくれませんか」といったやり取りも生まれていますよね。ひと昔前までは、西日本ロボティクスセンターと東日本ロボティクスセンターが互いにどのような業務をしているのか分かりづらい部分もありましたが、最近は垣根をこえた協力が増えてきていると感じます。

〈山本〉
後輩たちには、「貴重な経験ができたな」というポジティブな気持ちで現場を終えてほしいと思っています。そうすれば、将来的に施工支援や技術開発に携わる立場になったときにも、現場で学んだことをしっかりとアウトプットできるはずだからです。

樋下祐輔 山岳トンネル工事事務所 工事長(機電担当)

樋下 祐輔 山岳トンネル工事事務所 工事長(機電担当)

山岳トンネルの課題に向き合い続ける

〈山本〉
山岳トンネルは切羽(きりは)が見えた状態で工事を行うため、一つ判断を間違えれば人命にかかわる大怪我につながります。私たちにとって、現場で働く作業員の方々は工事をともに行う大切な仲間です。彼らが日々安全に作業できるよう、技術面で作業環境を整えることも、ロボティクス生産本部やロボティクスセンターの重要な任務だと思っています。
現在、私は遠隔化・自動化技術の開発を進めています。これまでは人間が危険な環境下で行っていた作業も、これからはロボットを使い、離れた安全な場所で操作することが当たり前になってくるでしょう。また、現場ではすでに、ICT・IoTを駆使した自動化技術も増えてきています。人が担っていた単純作業は、もはやロボットが行う時代なのです。
ロボティクス生産本部やロボティクスセンターには、多くの現場を経験してきた先輩や、専門性の高い技術者がそろっています。これからも新たな技術をつくりだし、「遠隔化・自動化による安全性の確保」と「ロボティクスによる現場生産性の向上」を両立させ、新たなトンネル現場の常識をつくっていきます。

ロボティクスセンター施設内にて01

ロボティクスセンター施設内にて

〈樋下〉
今の現場に赴任する前は、西日本ロボティクスセンターに7年ほど所属し、現地での施工計画や施工管理、工事獲得のための入札支援などを主に行いました。また、山岳トンネル工事の生産性向上や省力化・省人化に貢献するべく、技術開発にも携わりました。技術開発は現場に所属しているときには経験できないため、西日本ロボティクスセンターで非常によい経験を積むことができたと思います。技術開発は、一朝一夕でできるものではありません。工場で実験したときは問題なく作動したのにもかかわらず、実際に現場で使ってみるとプログラミング通りに動かず、チームの皆で原因を話し合いながらトライ&エラーを繰り返したこともありました。私が異動したあとも、さまざまな技術開発は継続しています。機電職は転勤のスパンも短く、一つの技術開発に最後まで関わることは少ないのですが、あとを引き継いだメンバーが先人の思いも引き継ぎ、技術開発の完成を成し遂げています。
現在は、長野県にある長大山岳トンネルの工事現場で工事長を担当しています。トンネルの施工に必要な仮設備や工事用機械の施工計画を進めたり、工事に必要な電気を通したりと、準備を進めているところです。全国的にも注目されている大規模な現場で、非常に難易度の高い施工にも挑戦する予定です。プレッシャーもありますが、最後まで全うしたいと思います。