最先端技術を用いた工事 Projects Using Cutting-edge Technologies

CASE.3

福岡市地下鉄七隈線中間駅(仮称)
西工区建設工事(2021年竣工)

「チーム同士が協力し合い難題を克服」

田中 善広 〈当時〉監理技術者・副所長

中央環状品川線大井地区トンネル工事
繁華街、国道、2つの河川の下を貫く地下鉄トンネル工事

福岡市西南部の橋本駅と市の中心街にある天神南駅を結ぶ福岡市地下鉄七隈線が利便性向上のためにターミナル駅である博多駅まで延伸することとなり、私たちもその工事の一部を受け持つことになりました。具体的には、天神南駅と博多駅の中間地点に新設される「中間駅(仮称)」の天神南駅側約3分の2の躯体を構築する開削工事と、そこを発進基地としてトンネルを構築するシールド工事、シールド機が到達する天神南駅との接合工事です。

本工事では延長570mのシールドトンネルを上下線合わせて2本掘っていくのですが、その地上部には西日本を代表する繁華街の中洲や1日に約3万台の車が通行する国道202号、さらに那珂川と博多川という2つの河川があり、騒音や振動、地盤沈下、地下水の出水など、さまざまな点に気を遣う必要がありました。

予想外の事態が発生

当初の計画では、開削工事によって中間駅の躯体を構築したあと、そこをシールド機の発進基地として利用、1本目のトンネルを掘削して天神南駅に到達したら一度シールド機を解体して、中間駅まで運び、再び組み直し、天神南駅までもう1本のトンネルを掘る予定でした。
しかし、受注直後に予想外の事態が発生しました。現場の地下に埋蔵文化財が見つかり、遺跡調査が行われることになったのです。これによって工事は約1年間ストップ。さらに工区の上にある春吉橋の架け替え工事がシールド機の通過後に予定されていたこともあって、工期を伸ばすことも不可能という窮地に立たされました。

大幅なプラン変更の結果、シールド機の発進を駅部の完成を待たずに行うことに決定、覆工桁・中間杭・土留支保工の盛り替えなどを行うこととし、開削工事で駅をつくりながらシールド工事でトンネルを掘り進めることになりました。
シールド発進基地として、地上にある道路2車線分の用地を使用しましたが、この限られたスペースを使って1日にダンプ約75台分の掘削土砂を搬出するほか、セグメントをはじめとした資材だけでなく、開削工事の資機材も搬入出しなければならず、そのやりくりには大変苦労しました。

藤井 剛〈当時〉副監理技術者・副所⻑
シールド機の到達先は営業中の駅の妻壁

掘進中は2つの橋をくぐることもあって、いかに地盤沈下、橋の変状を起こさないかが課題となりました。これには、切羽圧力を適切に保持することと土量管理を徹底することというダブルのチェック体制で対応。より確実性を期して進めていきました。

そしてシールド工事のクライマックスともなる天神南駅との接合のプロセスですが、こちらのハードルも高く、シールド到達時に営業中の天神南駅の妻壁をくりぬくという高難度なものでした。万一、出水があり、それが駅構内に及ぼうものなら地下鉄が利用できなくなってしまいます。
そこで考えたのが到達部である駅の妻壁の駅側に鋼製の作業室のスペースを設けることです。もし出水があってもその部屋の中で収まるようワンクッションおいて備えましたが、懸念していた事態は発生することなく、2本のトンネルをそれぞれ2019年7月と2020年2月に無事到達。工期を守って約1年半で完成できました。

シールド工事へのロマンを抱いて大林組へ

入社後、特に自ら志望することなくシールド工事に携わるようになった社員も多くいますが、私は入社前からシールド工事に興味があり、面接でもその点をアピールして大林組の一員となりました。
私が感じているシールド工事の魅力は、賑わう街を行き来する人々の足下で人知れずコツコツと大規模な工事が進められているというところです。そんなロマンを胸に1993年に入社。最初に東京メトロのシールド工事現場を経験し、続いて現場支援や営業支援、技術開発を担当するシールド技術部へ転属。その後は現場と技術部を行き来しながら、りんかい線や横浜市営地下鉄、ピッツバーグ地下鉄などのシールドトンネル工事を経験してきました。

地山を目視することなく掘り進めるシールド工事では、到達間際に興奮が最高潮に達し、到達した瞬間には得も言われぬ感動が全身を駆け巡ります。経験した者にしか分からないこの感情は、何度味わっても変わることがありません。
実際に電車に乗って自分が携わったトンネルを利用することがありますが、そのトンネルを通るたびに工事の思い出や完成したときの喜びが鮮明によみがえってきますね。

部署間の協力とチーム同士の助け合いで難題をクリア

大林組には、社員が率先して現場に立って作業員と一緒に工事に取り組むという社風があり、私自身とても気に入っています。
また、感覚的に仕事を進めることを是とせず、常に数字で評価し、論理的に事に当たるのが社員全員の姿勢です。そういった気風の中、今日までのシールド技術が培われてきており、気泡シールドやDOTシールド、URUP(ユーラップ)工法®︎といった新技術が生まれてきたと思います。

さらに、困難な状況にあってもお互いに助け合い、一つになって乗り越えていける団結力も私たちの会社のいいところ。特にイレギュラーが生じた今回のケースでは、設計部や技術部のサポートのもと、開削工事チームとシールド工事チームが連携を取り合ってとても「いい工事」ができたと感じています。
今後、より難しい条件下での工事に取り組むことがあるかもしれませんが、積み重ねられてきた技術力とチームワークを活かしながら、よいものを安全につくっていきたいと考えています。